北陸最高の省エネビルの建設に近く着手

~地域初のゼロ・エネルギー・ビル、北陸支店新社屋~

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2020.02.18

清水建設(株)<社長井上和幸>は、金沢市玉川町で進めている当社北陸支店旧社屋の解体工事を3月中に終え、北陸地域で最高の省エネルギー性能を備えた新社屋の建設工事に着手します。規模は地下1階、地上3階、延床面積約4,100m2です。竣工は2021年2月の予定で、最先端の省エネ・創エネ技術により使用開始時から地域初の「ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB(ゼブ))」の実現を目指します。これにより、年間のCO2排出量を370t程度削減できる見込みです。

新社屋の計画にあたっては、「北陸の地域・未来とつながるオフィスづくり」を設計コンセプトとし、“未来につなげる新技術の採用”、“金沢の歴史・伝統との融和”、“働き方改革、健康増進に資するオフィスづくり”を進めました。

計画上の最大の特徴は、未来につなげる新技術として最先端の省エネ・創エネ技術を採用し、ZEBの実現に取り組むことです。核となる新技術は、水素利用蓄電設備、太陽光発電、輻射空調、地域特性を生かした地中熱利用や自然通風・採光など多岐に亘ります。こうした取り組みが評価され、今回の建替計画は2019年度の国土交通省「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」及び環境省「水素を活用した自立・分散型エネルギーシステム構築事業」に採択されています。

水素利用蓄電設備には、産業技術総合研究所と共同開発した建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」を適用します。将来の水素社会の実現に欠かせない最先端技術であり、特徴は太陽光発電の余剰電力を使用して究極のクリーンエネルギーである水素を製造・貯蔵し、BCP対応等の必要時に抽出して電力に変換することです。国内で水素エネルギーを利用するビルや街区の計画が始動しつつありますが、当社北陸支店新社屋が北陸初の水素エネルギー利用ビルとなり、国内最大級の水素蓄電設備(容量2,000kWh)を採用します。

一方、金沢の歴史・伝統との融和を目指し、意匠面では古都に相応しい端正な佇まいを表現しました。金沢に多く残る町家と調和するよう格子状の外観とし、木虫籠(きむすこ)(ごう)天井を現代の技術で再現します。外観を特徴づける格子状のフレームは構造体の耐震壁としての機能を併せ持ち、地震時に建物に作用する力を100%負担する仕組みになっています。格天井は、新たに開発する県内産の能登ヒバと鉄骨を組み合わせた耐火木鋼梁(たいかもっこうはり)により表現する予定です。

また、オフィス空間は、これからニーズが高まる多様な働き方に対応できるようにフリーアドレス化を図るとともに、ペーパーレス化を推進します。働き方改革、健康増進に資するオフィス空間の実現に向け、引き続き採用する新設備の検討を進めていく考えです。

当社は、北陸支店新社屋を施工期間中からショールームとして活用し、水素利用蓄電設備を始めとする最先端技術を広くPRしていくとともに、使用開始後はZEB、WELL、LEEDの各認証取得に取り組み、建物の付加価値を高めていく考えです。

以上

≪参 考≫

北陸支店新社屋の概要

建設地 金沢市玉川町5-15
規模 地下1階・地上3階、延床面積4,100m2
構造 鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
工期 2020年4月~2021年2月
企画・設計・施工 清水建設(株)
古都に相応しい端正な佇まいを表現した北陸支店新社屋の外観。町家をモチーフにした格子状の外周フレームは構造体の耐震壁としても機能する。
古都に相応しい端正な佇まいを表現した北陸支店新社屋の外観。
町家をモチーフにした格子状の外周フレームは構造体の耐震壁としても機能する。
広々としたオフィス空間。吹き抜け空間を覆う耐火木鋼梁の格天井が特徴的。
広々としたオフィス空間。吹き抜け空間を覆う耐火木鋼梁の格天井が特徴的。

水素利用蓄電設備「Hydro Q-BiC」

週末・祭日など建物の電力需要が少ない時間帯に生じる太陽光発電設備(140kW)の余剰電力を利用して水素を製造し、特殊な合金に吸着させ蓄電(2,000kWh)する。平日の電力消費が多い時間帯、または非常時に水素を合金から抽出し発電する。現在、システムを適用している郡山市総合地方卸売市場内の管理棟において、日常的な運用を行いながらCO2排出量の削減効果と維持管理費の定量評価を実施している。北陸支店新社屋が実用化第一号となる。(数値は北陸支店新社屋に採用する設備容量)

古都に相応しい端正な佇まいを表現した北陸支店新社屋の外観。町家をモチーフにした格子状の外周フレームは構造体の耐震壁としても機能する。

ZEB認証

「建築物省エネ法」に基づき2016年4月に開始された省エネルギー性能の表示制度で使われる第三者認証ラベル「BELS(ベルス)」があり、ZEB Ready(省エネ率50%)以上を実現している場合には特別にその旨が表示される。BELSの運営団体は「一般社団法人住宅性能評価・表示協会」。なお、省エネ率75%以上をNearly ZEB、省エネ率100%をZEBと定義している。

WELL認証

公益企業であるIWBI(International WELL Building Institute)によって創設された、健康・快適性に重点を置いた環境認証制度。評価項目は空気や水といった10のカテゴリーから構成され、シルバー、ゴールド、プラチナの3段階で評価が行われる。2019年2月現在、世界中で1400件以上のプロジェクトが登録されており、日本でも15件が登録済み、うち1件が認証を受けている。

LEED認証

米国グリーンビルディング協会(USGBC:US Green Building Council)が開発、および、運用を行っている建物と敷地利用についての環境性能評価システム。LEEDは「Leadership in Energy and Environmental Design」の下線部の略。

木虫籠

金沢の町家の特徴である格子の割付が細かい出格子を指す言葉。「キムスコ」または「キムシコ」と読む。

格天井

角材(格縁(ごうぶち))を格子に組んで裏に板を張った天井。日本建築の古い建築様式で寺院建築や書院造りなどで、格式の高い部屋に用いられてきた。

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