ベトナム・ビエンホア空港で枯葉剤由来汚染土壌の洗浄実証試験が完了

~当社洗浄プラントにより汚染土壌のダイオキシン成分を95%除去~

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2019.12.26

清水建設(株)<社長 井上和幸>が、ベトナム全土の環境問題を所管する政府機関「NACCET(National Action Center for Chemical and Environmental Treatment)」と共同で進めている、同国ビエンホア空港における枯葉剤由来ダイオキシン汚染土壌の浄化実証試験において、オンサイト型土壌洗浄プラントによる洗浄処理試験が完了、当初の想定通りの除染効果が確認できたことを示す報告書を当社から政府関係機関に提出しました。この実証試験は、ベトナム政府と米国政府が推進している同空港を対象とした土壌浄化事業の技術選定プロセスに則り、当社とNACCETが計画したものであり、今後、2020年6月にもスタートする本格除染事業への採否が両政府により検討されることになります。

ベトナム国内には、ベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤に由来するダイオキシン汚染土壌が多く残され、ビエンホア空港には約85万トンに及ぶ同国最大規模のダイオキシン汚染土壌が存在すると推測されています。こうした状況を受け、当社は2014年から、日本国内で多くの処理実績がある土壌洗浄技術について、ベトナムの枯葉剤由来汚染土壌への適用可能性の調査を開始。2018年6月に、NACCETの前身組織であるベトナム国防省傘下の研究機関「CTET(CENTER FOR TECHNOLOGY OF ENVIRONMENTAL TREATMENT)」と実証試験の共同実施に関する覚書を締結しました。

覚書締結後、当社が日本国内に保有する土壌洗浄プラントを海路で分割輸送し、2018年11月にビエンホア空港内でのプラント建設に着手。プラントは2019年1月末に完成し、約2カ月の試運転期間を経て、3月下旬から実証運転を開始しました。以後、空港内から採取した汚染濃度の異なる複数の土壌試料(総量約900t)に洗浄処理を施した結果、洗浄処理土のダイオキシン成分の除去率は平均95%に達し、当社が室内実験で確認した除去率と同等の高い除染効果が得られました。これにより、汚染土壌量の70%近くを浄化土として再利用できる見込みです。

一方、汚染土壌全量の無害化に向け、2019年11月末から、洗浄処理後の残渣に熱処理を施す追加実験も米国企業と共同で実施しています。洗浄処理の残渣として生じる濃縮汚泥に熱処理を適用することでダイオキシン汚染土壌の完全無害化、100%の再利用を実現できます。また、洗浄処理は、熱処理と比べて低コストかつ環境負荷の低い土壌浄化技術であり、両者を併用することで、環境負荷と浄化コストを最小限に抑制できます。洗浄処理と熱処理を組み合わせた浄化手法の有効性を実証すべく、熱処理の追加実験を2020年3月までに完了させ、洗浄処理と熱処理の試験結果を総合した報告書をとりまとめる予定です。

当社は、今回の実証試験を通じて当社の汚染土壌処理技術の有効性を証明し、ダイオキシンや重金属、農薬等の汚染土壌処理をはじめとする環境改善事業をベトナム全土で展開することで、同国の経済発展に貢献していく考えです。

以上

≪参 考≫

ビエンホア空港内に設置したオンサイト型土壌洗浄プラント

ビエンホア空港内に設置したオンサイト型土壌洗浄プラント

ベトナムの枯葉剤由来ダイオキシン汚染土壌に対する取り組みの経過

2014年 4月 枯葉剤由来のダイオキシン汚染土壌への当社洗浄技術の適用性に関する調査に着手。
2015年 3月 ベトナム国防省主催のセミナーに参加。当社の土壌浄化技術、ダイオキシン類浄化施設についてプレゼンテーションを実施。
2015年 9月 ビエンホア空港の汚染土壌の提供を受け、土壌洗浄室内実験開始。
2016年 6月 土壌洗浄室内実験により、枯葉剤ダイオキシンに効果のある薬剤とその配合を見出し、当社洗浄技術で土壌浄化が可能なことを確認。
同国汚染土壌の大半を占めるとみられる濃度20,000pg-TEQ/g以下の中低濃度汚染土壌について、ダイオキシン含有量を95%除去できることを、ベトナム関係機関(国防省、資源環境省)、米国国際開発庁に報告。
2016年11月 ベトナム国防省関係者が来日し、当社洗浄プラントを視察。
2017年 2月 現地での洗浄実証試験についてベトナム国防省と打合を開始。
2017年10月 ビエンホア空港敷地内に当社がプラント実機を設置し、国防省と共同研究を行うことで基本合意。
2018年 6月 国防省傘下の研究機関「CTET」と、ビエンホア空港における土壌洗浄実証試験の共同実施に関する覚書を締結。

当社の土壌洗浄技術と実績

  • 当社の土壌洗浄技術では、汚染土壌をふるい分けした後、粒子の大きさに合わせて水洗いや擦り洗いを行い、分離した汚染物質を泡の表面に付着させて除去するフローテーションなどを行う。日本国内での各種汚染土壌の洗浄処理実績は累計300万tに及ぶ。
  • ダイオキシン汚染土壌は焼却処理(850℃以上)により無害化できるが、処理コストが高く、厳しい排気ガス管理が必要。当社技術による洗浄処理は、低コストであり、排水、排気ガスは発生しない。
  • 当社は2009年に、国内初となるダイオキシン汚染土壌洗浄処理プラントを神奈川県川崎市白石町に設置し、2012年まで運用。

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