2019.11.07
清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、建築物の屋上や地上部に設置された設備機器に起因する騒音問題の解決を目的に、低価格でありながら高い遮音性能と通気性を備えたアルミ製ルーバー「しずかルーバー」を開発・製品化しました。
ルーバーは、羽板と呼ばれる細長い板を一定の傾斜を付けて平行に並べたブラインドのような建材です。しずかルーバーの特徴は、羽板部分に反射、吸音、共鳴の三つの音響要素を組み合わせた独自の遮音機構を付与していることで、コンパクトな形状ながら、吸音を主たる遮音機構とする既存の遮音ルーバーと同等以上の遮音性能を備えています。部材構成もシンプルで、製造はアルミ押し出し成形でほぼ完結するため、既存製品の50%~80%程度のコストで採用できます。
近年、都市の密集化により、オフィスビルや商業ビル等の業務施設と住宅が近接する地域が多くなり、業務施設の屋上や地上部に設置された設備機器が発する騒音が近隣トラブルに発展するケースが見られます。その対策の一つとして、設備機器の性能維持に必要な通気性を確保しつつ遮音効果も発揮するルーバー材で設備機器の周囲を覆う手法が採用されています。ただ、既存の遮音ルーバーは、羽板に内蔵した大量の吸音材により騒音低減を図る製品で、羽板の形状が大型化・複雑化してしまうため価格が高く、容易に採用できないのが現状です。そこで当社は、吸音だけに頼らない遮音機構により、製造コストの低いシンプルかつコンパクトな形状を実現した遮音ルーバー「しずかルーバー」を開発、製品化しました。
しずかルーバーは、羽板間の通気経路に設けた三つの遮音機構により、高音域から低音域まで幅広い周波数帯に対して騒音低減効果を発揮します。三つの遮音機構のうち特に高音域に有効なのが、羽板の先端形状を利用した音の反射機構です。具体的には、通気経路下側の羽板先端の放物線部と、その対面に位置する羽板の円弧部を反射板として利用し、通気経路に進入した騒音を放物線部から円弧部、円弧部から放物線部へと反射させていくことで音源側に戻します。
一方、低音から高音までの広い周波数帯域の騒音低減に寄与するのが、羽板の中空部分に内蔵した耐候性吸音材による吸音機構で、吸音材には耐候性、防水性に優れる不燃性ポリエステル吸音材を使用します。さらに、中音域の騒音低減機能を高めるため、共鳴現象を利用した遮音機構を導入しています。具体的には、通気経路上にスリット共鳴器を組み込むことで、共鳴周波数付近の騒音成分を遮断します。この共鳴周波数を適切な帯域に設定することで、全体として高い遮音効果が発揮されます。
しずかルーバーは遮音性能のみならず通気性にも優れます。通気経路の形状が滑らかで、空気の流れを乱す部材を表面に使用していないため、空気の流れやすさを示す流量係数は0.5と既存製品の2倍~数倍の通気性を確保しています。
既にしずかルーバーは、当社が設計施工を手掛け、今年11月にオープンを迎える高層ホテル「SGリアルティ新大阪ホテル(からくさホテルグランデ新大阪タワー)」(大阪市淀川区)の地上設備ヤードの騒音対策建材として採用されています。今年12月から、製造委託先の(株)成和(京都府宇治市)を通じて外販も予定しており、販売価格は電解二次着色仕上4万8千円/m2~、フッ素樹脂塗装仕上5万5千円/m2~(ルーバーのみ、下地・鉄骨別途)を想定しています。
以上
≪参 考≫
しずかルーバーの形状
しずかルーバーの遮音機構
(1)発生音が元に戻る反射板【高音域】
放物線と円弧の二つの曲面の反射板を組み合わせた反射機構により、通気部分に進入した騒音は反射板を経由した後、流入経路を逆に辿って音源側に戻る。
(2)耐候性吸音材【低~高音域】
耐候性、防水性に優れた不燃性ポリエステル吸音材をルーバーの中空部分に組み込み、騒音を吸収。
(3)スリット共鳴器【中音域】
通気経路の背面にスリットを介した密閉空間を設けることにより、ヘルムホルツ共鳴器を形成。共鳴が起こる周波数では、騒音はスリット部より先に伝わらず、元の方向に戻る。
しずかルーバーの設置事例
【SGリアルティ新大阪ホテル(からくさホテルグランデ新大阪タワー)】
(株)成和の概要
所 在 地 | 京都府宇治市槙島町吹前50 TEL:0774-24-9922 |
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代 表 者 | 代表取締役 高田和廣 |
資 本 金 | 21百万円 |
設 立 | 1988年11月 |
業 容 | 建築金物事業 |
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