人と環境に優しい仮設資材を土木現場に適用

~紙素材を活用した仮設施工の生産性向上技術「KAMIWAZA」~

  • 土木

2019.08.27

清水建設(株)<社長 井上和幸>は、王子ホールディングス(株)<社長 加来正年>と共同で、SDGsの実現に寄与することも念頭に、軽量かつ加工性の高い紙素材を土木現場の仮設資材に活用する取り組みを進めています。活用する紙素材は、リサイクルが可能な環境資材で、衝撃吸収性能と強度を併せ持つ特殊強化段ボール、断熱性能・保水性能に優れる紙製シート材などの紙工品です。鋼材や木材に代わり取り扱いが容易な紙素材を仮設資材化することで、作業員の負担が軽減され、仮設施工の生産性が向上します。当社は、人と環境に優しい紙素材の仮設利用技術を「KAMIWAZA」と名付け、現場への適用を進めていく考えです。

段ボールなどの紙工品は主に梱包材として利用される一方、強度や耐候性の問題から建設資材として活用されることはほとんどありませんでした。しかし近年、強度、耐火性能、耐水性能に優れる高機能紙素材が製品化され、建材への適用可能性が高まってきたことを受け、当社は、現場環境下での段ボール材の耐候性を検証してきました。その結果、現場の湿潤環境下で吸湿・乾燥を繰り返した場合でも内部に大きな劣化は見られず、仮設資材に求められる耐候性が期待できることを確認しました。

仮設資材として主に活用する紙工品は、王子インターパック製の特殊強化段ボール「ハイプルエース」です。ハイプルエースは、重量物の包装資材として利用されている3層構造の段ボール材で、衝撃吸収性能と強度に優れます。また、内部に空気層の空洞があるため、保温性能、遮音性能も併せ持ちます。

ハイプルエースの仮設利用の代表事例は、山岳トンネルの坑内に仮設するトンネル風門への適用です。風門は、トンネル貫通時に生じる急激な風の流れを止めるために構築するもので、大断面のトンネルでは、鋼材等の部材をクレーン車で揚重しながらトンネル断面を塞ぐ壁を構築していました。ハイプルエースを活用したトンネル風門は長崎県内の道路トンネル現場に初めて適用したもので、事前に構築した支保工に1m四方の段ボール部材を人力で固定し、約100m2の大断面の仮設壁を組み立てました。組立作業にクレーン車は不要で、高所作業車のみで対応できました。作業人数は6名、作業時間は半日で、コストについても従来工法の約半分に縮減できました。

「KAMIWAZA」シリーズでは、ハイプルエースのほか、断熱性能・保水性能・吸水性能を併せ持つ紙製シート材(王子キノクロス製「ハトシート」)等も活用し、現場のニーズに応じた仮設の構築を進めていきます。これまで、トンネル・ダム等の土木現場において、防音壁等の仮設防音設備、骨材貯蔵設備の温度上昇を抑制する遮熱シート等に紙素材を適用しています。

当社は引き続き、「KAMIWAZA」シリーズのラインナップの拡充に取り組み、現場の生産性向上と持続可能な社会づくりに注力していきます。

以上

≪参 考≫

紙素材で構築したトンネル風門

特殊強化段ボールのパーツを組み合わせて仮設壁を構築
特殊強化段ボールのパーツを組み合わせて仮設壁を構築
1パーツは2kg程度であるため、 高所作業車のみで施工可能
1パーツは2kg程度であるため、 高所作業車のみで施工可能

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