2019.07.24
清水建設(株)<社長 井上和幸>は、5兆円超の市場規模となる洋上風力発電施設建設工事の受注に向け、約500億円を投じ、超大型洋上風車の建設に対応できる世界最大級の搭載能力及びクレーン能力を備えた高効率の自航式SEP船(Self-Elevating Platform:自己昇降式作業船)の建造に来月にも着手します。完成は2022年10月の予定です。これにより、再生可能エネルギー分野での競争力を確保し、エンジニアリング事業のさらなる拡大を目指します。
我が国では、本年4月に洋上風力新法が施行され、洋上風力発電市場の急速な拡大が見込まれるなか、すでに欧州では大型とされる6~8MW(メガワット)級の洋上風車による発電施設が商用化されています。また、欧州の発電事業者及び風車メーカーは、将来、固定価格買取制度(FIT)に頼らなくても事業採算を確保できるように、9~12MW級の超大型風車の計画を進めています。我が国でも、今後の発電単価の削減と限られた建設海域での事業規模・採算を勘案すると、欧州同様に8MW級以上の風車が必須となってきます。
一方、現在、日本には8MW級以上の風車建設に対応できるSEP船がありません。欧州から大型SEP船を傭船すれば対応可能ですが、現地での需要が高くその確保は容易ではありません。そこで当社は、日本国内で計画されている洋上風力発電施設のEPC受注を目指し、世界最大級の搭載能力及びクレーン能力を持つSEP船の建造を決定しました。
建造するSEP船は、全幅50m、全長142m、総トン数28,000t、クレーンの最大揚重能力は2,500t、最高揚重高さは158mで、世界有数の作業性能を備えています。水深10~65mの海域での作業に対応でき、作業時には4本の脚を海底に着床させ、船体をジャッキアップさせることで海面から切り離し、波浪に左右されない作業条件を確保することができます。
SEP船による洋上風車の施工手順は、はじめに風車の基礎を先行施工します。続いて、風車のタワー、ナセル(駆動部)、ブレード(羽)をSEP船に搭載・運搬し、基礎上に据え付けます。建造するSEP船は、8MW風車なら7基、12MWなら3基分の全部材を一度に搭載でき、予備日をみても8MW風車の場合は7基を10日、12MWの場合は3基を5日で据え付け可能です。また、太平洋側の特徴である10秒程度の長周期波浪(うねり)においても船体のジャッキアップ・ダウンが可能であり、既存のSEP船に比べ5割程度高い稼働率を発揮できるように設計しています。
なお、SEP船の建造計画にあたっては、2018年10月から欧州の設計会社(GustoMSC)の協力を得て仕様検討・設計を行ない、建造はジャパンマリンユナイテッド(株)に発注しました。また、運航管理については、多数の作業船を保有している深田サルベージ建設(株)等の協力を得て体制を構築します。
今回のSEP船の建造は、中期経営計画<2019~2023年>の投資計画のうち、インフラ・再生可能エネルギー・新規事業投資の核となるものです。当社は今後、国内外の発電事業者に当社のSEP船の優れた作業性能を提案し、洋上風力発電施設のEPC受注に結びつけていく考えです。
以上
≪参 考≫
建造する自航式SEP船のパース(ブレード取付中)

洋上風力発電市場
現在、日本国内では、発表ベースだけでも、発電容量約1,000万kWの風力発電施設(着床式)の建設計画が進行中です。発電事業者は、経済性を重視して日本国内では過去に採用実績がない8MWや12MWクラスの大型風車の採用を計画しており、当社の試算では、風車本体の調達から設置工事までを含む施設建設工事の市場規模は5兆円超という結果が出ています。
EPC受注
設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)を含む、プロジェクトの建設工事請負契約。
日欧の協力企業
■ジャパンマリンユナイテッド(株) 非上場
所 在 地 | 横浜市西区みなとみらい4-4-2 | |
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社 長 | 千葉光太郎 | |
設 立 | 2013年 1月 | |
資 本 金 | 250億円 | |
事業内容 | 造船業、商船・艦船・海洋浮体構造物等の建造業 等 | |
担当業務 | SEP船の詳細設計、建造 |
■GustoMSC B.V. 非上場
所 在 地 | オランダ国 | |
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社 長 | Nils Van Nood | |
設 立 | 2011年(1862年創業) | |
資 本 金 | 18,000€(2017年12月) | |
事業内容 | 船舶の設計、コンサルタント | |
担当業務 | SEP船の概念設計、基本設計、ジャッキシステム設計・製造、クレーン設計・製造 |
■深田サルベージ建設(株) 非上場
所 在 地 | 大阪市港区築港4-1-1 | |
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社 長 | 山本寿生 | |
設 立 | 1951年7月 | |
資 本 金 | 6億5,000万円 | |
事業内容 | 海洋土木工事及び海洋開発関連事業、海難救助 等 | |
担当業務 | 建造仕様の検討、配員計画、運航計画 |
風車のスケール

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