木質構造を採り入れた中層集合住宅の建設に着手

~木質の柱、梁、耐震壁、内外装の仕上材に木材を多用~

  • 建築

2019.01.08

清水建設(株)<社長 井上和幸>は、名古屋市内に建設する中層集合住宅に中大規模の耐火建築向けに開発したハイブリッド木質構法「シミズ ハイウッド」、木質耐火部材「スリム耐火ウッド」を初適用、このほど建設工事に着手しました。この構法は、木質構造と鉄骨(S)造、あるいは鉄筋コンクリート(RC)造の自由な組み合わせを可能にしたものです。今回の計画では、中層集合住宅に求められる耐震性や耐火性、遮音性等を確保するため、木質構造とRC造の最適な組み合わせを追求しました。

この中層集合住宅は当社の社有社宅として計画したもので、地下1階が駐車場、地上4階が26戸の住宅となります。規模は、建築面積799m2、延床面積3,152m2、竣工は2020年2月の予定です。設計にあたっては、構造体や内・外装の仕上材として計178m3もの木材を採用し、木質の居住空間の創出に努めました。こうした取り組みが評価され、本計画は国土交通省から2018年度の「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択されました。

基本的な構造計画は、地下1階の柱頭部に設けた11基の免震装置上に、幅50.5m、奥行き17.0m、厚さ90㎝の人工地盤を築き、その上に4階建ての建物を載せる架構になっています。うち、木質構造部は、建物長辺方向の外周に位置する梁56体と柱28体、間柱56体、各住戸内に原則2体ずつ配置する耐震壁57体です。これらの柱・梁の接合部にはシミズ ハイウッドの核となる、耐震性、耐火性、施工性に優れたプレキャストコンクリートの接合部材(PCa接合部材)を用いて一体化します。

この集合住宅は1時間耐火となるため、木質構造の柱、間柱、梁には、当社と菊水化学工業が共同開発し、国土交通大臣認定を取得した「スリム耐火ウッド」を初採用します。これらの柱・梁を建物屋外に配置し外観の木質感を増すために、防水性、耐候性を備えた仕様を予め開発しています。

一方、耐震壁には、ひき板を繊維方向が直交するように積層接着したCLTパネル(直交集成板)を採用します。CLT耐震壁は、建物各階中央部を長辺方向に走るRCの柱・梁フレームの中に組み込まれ、建物の長辺方向に作用する地震力の最大60%程度を負担するとともに、間仕切り兼仕上材としても機能します。

構造部材のほか、住戸境のRC耐震壁の表面、床材、妻側の外壁にも木材を使用します。一部床は、RCとCLTパネルの合成床とし、CLTパネルは施工時には型枠、RC床の防振性能と遮音性能の補完材、天井面の仕上材として機能します。こうして各所に使用する木材が、“木質の居住空間”を演出します。

今後、公共建築物等木材利用促進法の運用強化などを背景に、木材利用のニーズが高まることが予想されることから、当社は引続き建造物を木質化・木造化する技術開発に取り組みます。

以上

≪参 考≫

工事概要

工事名称 茶屋ヶ坂アパート建替工事
所 在 地 名古屋市千種区赤坂町1-29-2
規  模 地下1階、地上4階、建築面積799.86m2、延床面積3,152.55m2
発注・設計・施工 清水建設(株)
工  期 2018年12月~2020年2月
外観写真
内観写真

構造計画

RC造+木造のハイブリッド構造・免震構造 構造モデル
RC造+木造のハイブリッド構造・免震構造 構造モデル
CLT耐震壁 断面図
CLT耐震壁 断面図
住戸部分の構造モデル
住戸部分の構造モデル

シミズ ハイウッド(Shimizu Hy-wood)

シミズ ハイウッドではRC接合部材を介して、木質構造とRC造、あるいはS造といった異なる構造の柱同士や柱・梁を接合・一体化することで、様々なニーズに応じた自由な木質空間を提供する。RC接合部材は耐震性、施工性に優れ、火災時に木質柱への熱伝導・延焼を抑制する。

柱・梁の構成
柱・梁の構成
CLT耐震壁の接合部
CLT耐震壁の接合部
詳細断面図
詳細断面図

スリム耐火ウッド

特徴は、燃え止まり層を耐火シートと強化石膏ボードの異種材料を組み合わせて、二重の燃え止まり層を形成すること。火災時の加熱により薄い耐火シートが発泡する断熱効果と強化石膏ボードによる吸熱・断熱効果により、燃え止まり層の耐火性能を高めつつ、その厚さを32㎜に抑えている。燃え止まり層を薄くすることにより、コストを低減するとともに、室内の有効空間や開口面積を広くできる。

スリム耐火ウッドの構成
スリム耐火ウッドの構成

サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)

この事業は、再生産可能な循環資源である木材を大量に使用する大規模な木造建築物等の先導的な整備事例について、その具体の内容を広く国民に示し、木造建築物等に係る技術の進展に資するとともに普及啓発を図ることを目的にしている。

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