2018.07.09
清水建設(株)<社長 井上和幸>は今年11月にも、ベトナム国防省と共同で、枯葉剤由来ダイオキシン汚染土壌が大量に残るベトナムホーチミン市近郊のビエンホア空港内においてオンサイト型実規模の土壌洗浄プラントの建設に着手、2019年1月中旬から4月末までの3カ月半にわたり、ダイオキシン汚染土壌の洗浄実証試験を行います。この実証試験は、ベトナム政府が計画している同空港の土壌浄化に向けた技術選定プロセスの一環であり、当社はこのほど、ベトナム国防省傘下の研究機関「CTET(CENTER FOR TECHNOLOGY OF ENVIRONMENTAL TREATMENT)」と実証試験に関する覚書を締結しました。
計画では、18年12月までに同空港内に土壌洗浄プラント(最大処理能力40t/時)を完成させ、19年1月の稼働開始を目指します。実証試験は、国防省側と共同で実施し、当社が洗浄プラント及び関連機器の整備・運搬・建設・運転管理等、国防省が土地整備、周辺インフラ工事等を担当します。
ベトナム国内には、ベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤に由来するダイオキシン汚染土壌が多く残され、米軍基地として利用されていたダナン、ビエンホア、フーカットの各空港をはじめ、28カ所の高濃度汚染エリアが存在します。深刻な健康被害が大きな社会問題となる中、ベトナム政府は持続的な経済成長を図るため、こうした負の遺産の解消を目指し、2030年までに全土の土壌浄化事業を完了する目標を掲げています。ビエンホア空港には約85万tに及ぶ同国最大規模のダイオキシン汚染土壌が存在すると推測されており、土壌浄化事業の早期着手に向け、現在、事業主体となるベトナム国防省が適用技術の選定作業を進めています。
土壌洗浄は、一般的な焼却処理と比べて、低コストかつ環境負荷の低い土壌浄化技術です。当社の洗浄技術を適用すれば、ダイオキシン含有量の90%以上を除去でき、洗浄処理した汚染土壌量の7割近くを浄化土として再利用できる見込みです。残りの約3割に焼却処理を適用することで、焼却処理単独の1/2程度のコストで土壌浄化を実現できます。実証試験では、ダイオキシン除去率95%を目標に、汚染土壌の洗浄処理を行います。
実証試験を通じて、当社洗浄プラントによる洗浄処理の有効性とコスト優位性を確認し、ビエンホアでの土壌浄化事業への技術適用、事業参画を目指すとともに、その他の汚染地域での技術適用について調査を進めていく考えです。
以上
≪参 考≫
ベトナムの枯葉剤由来ダイオキシン汚染土壌に対する取り組みの経過
2014年4月 | 枯葉剤由来のダイオキシン汚染への当社洗浄技術の適用性に関する調査に着手。 |
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2015年3月 | ベトナム国防省主催のセミナーに参加。当社の土壌浄化技術、ダイオキシン類浄化施設についてプレゼンテーションを実施。 |
2015年9月 | ビエンホア空港の汚染土壌の提供を受け、土壌洗浄室内実験開始。 |
2016年6月 | 土壌洗浄室内実験により、枯葉剤ダイオキシンに効果のある薬剤とその配合を見出し、当社洗浄技術で土壌浄化が可能なことを確認。 同国汚染土壌の大半を占めるとみられる濃度20,000pg-TEQ/g以下の中低濃度汚染土壌については、ダイオキシンの除去率が95%に達し、洗浄土壌の7割程度を再利用可能な1,000pg-TEQ/g未満の浄化土に再生できることを、ベトナム関係機関(国防省、資源環境省)、米国国際開発庁に報告。 |
2016年11月 | ベトナム国防省関係者が来日し、当社洗浄プラントを視察。 |
2017年2月 | 現地での洗浄実証試験についてベトナム国防省と打合を開始。 |
2017年10月 | ビエンホア空港敷地内に当社がプラント実機を設置し、国防省と共同研究を行うことで基本合意。以降、実施方法、内容についての協議を継続。 |
当社の土壌洗浄技術と実績
- 当社の土壌洗浄技術では、汚染土壌をふるい分けした後、粒子の大きさに合わせて水洗いや擦り洗いを行い、分離した汚染物質を泡の表面に付着させて除去するフローテーションなどを行う。今回の実証試験では、当社が国内に所有しているオンサイト型の土壌洗浄プラントを現地に持ち込み、建設・運用する。日本国内での各種汚染土壌の洗浄処理実績は累計300万tに及ぶ。
- ダイオキシン汚染土壌は焼却処理(850℃以上)により無害化できるが、処理コストが高く、厳しい排気ガス管理が必要。当社技術による洗浄処理は、低コストであり、排水、排気ガスは発生しない。
- 洗浄処理を行った汚染土壌量の70%近くが浄化土として再利用可能となる。低コストの洗浄処理と焼却処理を組み合わせることで、焼却処理単独の1/2程度のコストでダイオキシン汚染土壌の浄化・無害化を実現できる。
- 当社は2009年に、国内初となるダイオキシン汚染土壌洗浄処理プラントを神奈川県川崎市白石町に設置し、2012年まで運用。
オンサイト型土壌洗浄プラント(イメージ)
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