病院物流動線計画支援システム「サプライくん」を開発

清水建設（株）＜社長 井上和幸＞はこのほど、病院内の多様で複雑な物流動線をわかりやすく見える化する病院物流動線計画支援システム「サプライくん」を開発・実用化しました。今後、このシステムを活用して設計提案を行うことはもちろん、病院の物流動線を評価・計画するコンサルティング業務を展開します。後者の費用は、病院の規模等の諸条件によって異なりますが、200床規模の病院で100万円程度を見込んでいます。

サプライくんの特徴は、簡単な操作により短時間で物流動線の合理性を評価・見える化できることです。このため、諸室の配置をはじめとするパラメータを変更しながらシミュレーションを繰り返すことで、より合理的な動線計画を提案できます。物流動線を評価するシステム開発は医療関連業界初となります。

病院内の搬送物品は医薬品や医療材料、リネン、食事など多岐にわたり、物品管理者や薬剤師・看護師などの多くのスタッフが異なる時間帯に様々な手段で搬送しています。その複雑さに起因して無駄が生じていることも多く、院内物流の合理化は病院経営上の重要な課題の一つです。しかし、院内物流を左右する動線の合理性の評価は病院経営者にも設計者にも容易ではありません。加えて、物流を想定しながら進める病院の新築、増改築等の設計では、動線計画の評価は一層難しく、発注者、設計者をはじめとする関係者の合意形成には時間を要します。

こうした課題のソリューションがサプライくんです。開発にあたっては、当社ならではの病院運営経験に基づくノウハウを活かし、医療材料、薬剤、リネンなどの物品カテゴリー別に、品目、関連諸室、搬送の時間帯や頻度などをデータベース化し、標準的な院内物流方式をモデルとして初期設定。これにより、条件設定等の複雑な入力作業をなくしました。システム適用時には、初めに病床数や各階平面図（PDFや手書き図面でも可）などの基本情報を入力し、物流に関係する諸室や通路・ELVをシステムに認識させるアイコンを図面上に配置すれば一連の入力作業が終了します。

シミュレーション結果は、平面図上への物品別の最短の搬送経路の表示、物品別の搬送距離のグラフ表示、搬送状況の3Dアニメーション表示という3通りの形式でアウトプットされます。基本情報の入力から結果表示までに要する時間はわずか2～3時間です。搬送時間帯の想定や関係諸室などのパラメータの変更は、初期設定しているモデルの設定値を変更するだけなので、容易に実施できます。

病院経営者、各種職員、設計者などの関係者は、ビジュアル表示されたアウトプットを見ながら協議できるので、動線計画案に関する合意形成が容易になります。また、コンサルティング業務を行う場合、既存病院の基本情報を入力してシミュレーションすることで、運用面の課題抽出や改善計画の提案を素早く行えるようになります。

当社は今後、サプライくんの3Dアニメーション上での自動解析やCAD、BIMとの連動をめざします。また、コンサルティング業務を積極展開し、設計施工案件の受注に結びつけていく考えです。