建物付帯型の水素エネルギー利用システムが本格稼働

~水素社会の早期実現に向け、最適な制御技術を確立へ~

  • 建築
  • 環境

2017.06.01

清水建設(株)<社長 井上和幸>と国立研究開発法人産業技術総合研究所<理事長 中鉢良治>との共同研究として、同研究所の福島再生可能エネルギー研究所(FREA)内に建設された建物付帯型の水素エネルギー利用システムが、本日6月1日から本格的な実証運転を開始します。計画では、2018年3月まで実証運転を行い、システムの性能を検証するとともに、当社が開発したスマートBEMSによる最適な制御技術の確立を目指します。

2016年2月にスタートした本共同研究では、初めに新たな水素エネルギー利用システムの共同開発に取り組み、約10カ月に及ぶ開発・設計期間を経て同年11月に実証システムの建設に着手し、17年4月に完成。その後、個々の設備機器の性能を評価し5月からシステムの準備運転を実施してきました。

水素エネルギー利用システムは、余剰電力で水を電気分解して水素を製造、水素吸蔵合金により水素を貯蔵、必要の都度、水素を放出させて酸素との化学反応により電気と熱を取り出すものです。実証システムは、太陽光発電装置(出力20kW)、水電解装置(5Nm3/h)、水素貯蔵装置(約40Nm3)、燃料電池(出力3.5kW)、蓄電池(出力:10kW)からなり、延床1000m2程度の建物利用に特化したシステム構成としました。これらの機器は、順次容量を増やしていく予定です。水素貯蔵装置については、産業技術総合研究所が知見を蓄積してきた水素吸蔵合金をベースに構築しています。

実証運転にあたっては、実際の建物の電力・熱需要データに基づき、シミズ・スマートBEMSが太陽光発電の発電状況を勘案しながら、水素の製造、貯蔵、放出等を監視・制御します。今後、約10ヶ月に及ぶ実証運転を通して、最適な制御技術を確立します。

水素は、CO2を排出しないクリーンなエネルギーであり、種々のエネルギーから容易に製造できることから、将来の二次エネルギーの中心的役割を担うことが期待されます。清水建設(株)と産業技術総合研究所は今回の共同研究により、水素社会に対応できる建物付帯型のコンパクトで安全な水素エネルギー利用システムを開発し、2020年までに建物、街区への導入を目指します。

以上

≪参考≫

キーワード説明

  • 水素社会石油や石炭などの化石燃料あるいは原子力エネルギーを水素エネルギーに代替させる水素万能社会を意味する。
  • 水素吸蔵合金冷却や加圧すると水素を吸収し、加熱や減圧により水素を放出する合金。水素をガスボンベに高圧貯蔵するのにくらべ、安全性が高く、簡単に貯蔵できる。
  • スマートBEMS清水建設が開発した建物のエネルギー制御システム。分散型電源や各種建物設備機器を統合的に最適制御することで、快適かつ効率的に省エネを実現できる。
水素エネルギー利用システムの概念図
水素エネルギー利用システムの概念図
FREA内に建設した水素エネルギー利用システム
FREA内に建設した水素エネルギー利用システム

ニュースリリースに記載している情報は、発表日現在のものです。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、お問い合わせください。