ニーズを先取りし、再生医療エンジニアリングを展開

~細胞培養プロセスを最適化する研究施設「S-Cellラボ」が完成~

  • エンジニアリング

2017.03.23

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、再生医療の普及に伴い増大が見込まれるiPS細胞等の培養施設の建設ニーズに対応すべく、細胞培養環境を最適化する高度な環境制御機能を備えた細胞加工・調製施設(CPF)「S-Cellラボ」を技術研究所内に建設しました。今後、この研究施設の中で実際に各種細胞を培養しながら最適な培養環境を究明し、再生医療エンジニアリングに展開していく考えです。

経済産業省による再生医療の市場規模予測では、国内で2020年に2千億円、30年には1.6兆円に急拡大し、海外を含めた市場規模はその10倍になるとされています。これに伴い、iPS細胞の臨床応用や創薬利用、細胞保存事業の拡大などにより、大規模な細胞培養施設の建設ニーズの増大が見込まれます。一方、細胞培養の生産性は、細胞の種類・個体差に加えて、原材料、容器などの資材、培養プロセス(細胞の解凍、播種、培養、観察、評価、継代、凍結、保存)、さらには培養環境など多種多様な要因により左右されます。細胞の量産過程においては、これらのばらつきによる僅かな生産性の低下が大きなロスにつながるため、細胞培養の統合的な管理方法の確立が求められています。

こうしたニーズに対応するための施設が「S-Cellラボ」です。施設規模は約100m2で、細胞培養の研究に必要な機能を集約した30m2のユニットを組み合わせて構築しています。このラボでは、培養の過程で細胞に大きな影響を与える可能性がある清浄度・気流・室圧(差圧)・温度・湿度に加え、光・音・振動、さらには空気中のCO2およびガス状化学物質にいたるまでリアルタイム・モニタリングしつつ、それぞれの濃度を制御することが可能です。各種細胞を培養しながらモニタリングを継続し、その結果と細胞培養の生産性との関係を明らかにしていくことで、最適な培養環境を究明します。

また、培養環境の最適化、生産性向上には、細胞の分裂・成長の様子や遺伝子発現量などを踏まえた培養状況の適切な評価が必要です。このため、ラボ内には、遺伝子発現量を迅速に測定するリアルタイムPCRや細胞形態の高度画像解析が可能なライブセルイメージング装置など、専用の分析機器も備えています。

現時点で、細胞培養環境のリアルタイム・モニタリングと培養プロセスについて統合的な実証が可能な研究施設は「S-Cellラボ」の他にはありません。目的とする培養プロセスの検証に適切な実験の場を提供することが可能なことから、当社はこの研究施設を用いて、自社研究にとどまらず、製薬会社や研究機関、ベンチャー企業と広く共同研究を実施する考えです。それにより、細胞培養環境の最適化を図り、培養する細胞の品質の安定化、生産性を向上させる総合的なプロセス設計のノウハウの蓄積を図るとともに、再生医療エンジニアリングの積極展開を図ります。

以上

≪参考≫

S-Cellラボ(Shimizu Cell Laboratoryの略)

  • 所在地江東区越中島三丁目4-17
    清水建設技術研究所 クリーンルーム実験棟内
  • 規   模約100m2
  • 仕   様
    • 細胞培養室、分析室各30m2グレードB 23±2℃ 50±10%
    • 多目的室20m2グレードC 23±2℃ 50±10%
  • 設備装置空気中ガス分析システム、ライブセルイメージングシステム、リアルタイムPCR 等
顕微鏡による培養状態の観察
細胞調整室の安全キャビネット内での培養作業

CPF

Cell Processing Facility (細胞加工・調製施設)の下線の略

S-Cellラボの概念図

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