部分免震システム「安震スライダー」を初適用

~キュービクル等の重要設備機器を免震化~

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2017.02.23

清水建設(株)<社長 井上和幸>と日本ピラー工業(株)<社長 岩波清久>はこのほど、地震時に重要設備機器の安全性を向上させる部分免震システム「安震スライダー」を開発し、初適用しました。安震スライダーは、2014年に両社で共同開発した立体自動倉庫向けの部分免震システム「ラックベーススライダー」をバージョンアップしたものです。具体的には、免震支承1台の支持荷重が5t以下になる軽荷重の機器の免震化を可能にした結果、屋外設置型のキュービクル等にも対応できるようになりました。

東日本大震災では、生産施設自体は被害を受けなくても、変電設備を収納するキュービクルが被災したことにより、製造ラインが停止したケースが多く報告されています。キュービクルへの入力加速度が1G(980gal)を超えると、内部の機器が損傷するだけでなくキュービクル自体が転倒する可能性もあります。特にビルの屋上に設置する場合は、階数が高くなるほどキュービクルへの入力加速度が増幅されるため、被害を受けやすくなります。

そこで、震度6強~7クラスの大地震時に対しても入力加速度を0.3G程度に低減できる免震効果を発揮する一方、強風には反応しない部分免震システム「安震スライダー」を開発しました。この免震システムには、基礎(床)と免震化対象物の架台との間に設置する傾斜すべり支承という特殊な装置を用います。

傾斜すべり支承は、直交する上下の2本のレール「すべり板」とそれらを連結しつつすべり板上をスライドする「摺動子」と呼ぶ部材で構成されます。上下のすべり板はそれぞれ、免震化対象物の底部と基礎上に固定します。摺動子は下のすべり板上をスライドし、逆に上のすべり板は摺動子上をスライドします。平常時には摺動子がすべり板の中央部に位置するように、「く」の字型の傾斜を板に付けています。この仕組みにより、地震時には上下のすべり板がそれぞれ水平2方向に自由にスライドすることで、あらゆる水平方向の揺れに対して免震効果を発揮するとともに、地震による揺れが収まるとすべり材につけた傾斜により摺動子が元の位置に戻る復元効果を発揮します。

摺動子の表面には摩擦材を設置します。この摩擦材の抵抗により、強風時には摺動子がスライドせず、大地震時には入力地震動が250~300galになると摺動子がすべり板上をすべるため、免震化対象物にそれ以上の加速度が生じることはありません。すべり板のサイズは免震化対象物の形状や重量によって異なりますが、長さは80~100㎝程度、幅は5~10㎝程度になります。1台の傾斜すべり支承で支持する重量は1~5t程度です。設置費用は、例えば20tのキュービクル(長さ約10m)に6台設置した場合で400万円程度となり、コストパフォーマンスに優れています。

実用化第一弾の屋外キュービクルの規模は、幅260㎝、奥行き260㎝、高さ265㎝、重量3tです。日本ピラー工業(株)の三田工場の敷地内に設置されているものです。

今後、両社は安震スライダーのコストダウンに向けた検討を重ねるとともに、清水建設(株)は、生産施設や病院などのキュービクルやサーバー、精密部品のストッカー等はもとより、小規模建屋等に対しても採用を提案していく考えです。

以上

≪参考≫

傾斜すべり支承の概要
傾斜すべり支承の動き模式図
傾斜すべり支承写真
キュービクルの土台に安震スライダーを設置した状況
安震スライダー概念図

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