最盛期を迎えた平瀬ダム建設工事

~生産性向上により約2,500人を省人化~

  • 土木

2016.12.16

清水建設(株)<社長 井上和幸>が五洋建設(株)、井森工業(株)、(株)ナルキと共同企業体(清水建設JV)を組成し、山口県岩国市で建設を進めている平瀬ダムが堤体工事の最盛期を迎えています。今日(12月16日)現在、工事の進捗率は約43%で、堤高は27m、堤体コンクリートの打設量は87,800m3に達しています。また、生産性を向上させる地道な技術の積み重ねにより、堤体工事終了までに総労働力の5%にあたる約2,500人の省人化を達成する見込みです。

平瀬ダムは、日本三名橋の一つ「錦帯橋」が架かる錦川の上流に位置する多目的ダムです。錦川流域では、繰り返し甚大な台風被害を受けており、記憶に新しいところでは2005年の台風14号が錦川を氾濫させています。一方、錦川の豊かな水流はかんがい用水や都市用水として広く利用されていますが、1994年の渇水では厳しい取水制限が課され渇水被害も発生しています。山口県はこうした被害防止を目的に平瀬ダムを計画したものです。

平瀬ダムは、堤高73m、堤頂長300m、堤体積340,000m3の中規模ダムで、工期は2014年3月~2020年6月です。清水建設JVは当ダムの技術提案型入札にあたり、コンクリートの製造・打設・養生方法や骨材の製造・貯蔵方法、さらには騒音対策、水質保全対策を独自提案。それらの有効性が山口県から評価され、14年3月に約123億円(税込)で落札しました。同年3月末の着工後、15年1月末の転流、本年1月末の堤体部掘削工事の終了を経て、2月初旬に堤体コンクリートの打設に着手。計画では2018年9月に堤体が打ち上がる予定です。

清水建設JVは、国土交通省が提唱するi-Consliuctionを推進すべく、生産性を向上させる各種技術を考案して省人化を図っています。最も省人化効果を発揮したのが、ダム本体コンクリートが接する基礎岩盤面を清掃する重機のアタッチメント「バックホーブラシ」です。このブラシにより約1,400人を省人化。さらには、コンクリート運搬・打設用バケットを1.25t軽量化し、その分、1回あたりの運搬容量を0.5m3、10%増大(5m3→5.5m3)したことにより約750人、設計段階から予定されていたプレキャスト監査廊に加え、常用洪水吐天端スラブや堤頂張出し部等にプレキャスト部材を採用することにより約350人、の省人化を見込んでいます。

一方、品質面ではコンクリート骨材の冷却設備とひび割れ監視システム、さらにはCIMで作成したダムの三次元モデルが威力を発揮しています。錦町広瀬は山口県内で最も気温が高くなるので、コンクリートの温度ひび割れを防止するために夏季には打設前に骨材を冷却したうえで、監視システムがコンクリート打設部の内外温度差を監視しひび割れリスクを指数化・見える化しています。三次元モデルは施工計画の立案に活用することはもちろん、将来の維持管理に備え、コンクリート品質管理記録を三次元モデルの当該部位に入力しています。また、ダムコンクリートの締固め完了の判断をプロの職人同等のレベルで行う3Dスキャナ計測システム搭載の締固め装置「情報化バイバック」を開発し、実機を現場に導入してコンクリートの施工品質の確保に努めています。

環境面への貢献については、夜間工事用の照明にLED照明を全面採用することで消費電力量を7割強削減するとともに誘虫を抑制し、その指向性の高さにより夜間の光害も防止しています。また、コンクリートの骨材については、入札要綱に基づき2005年の台風14号による洪水で錦川に堆積した河床砂利を使用し、環境保全に努めています。

清水建設JVは引き続き、省人化、工期短縮、品質向上に努めるとともに、無事故・無災害で工事を推進し、2020年1月の試験湛水開始を目指します。

以上

≪参 考≫

平瀬ダムの工事概要

  • 所在地(右岸)山口県岩国市錦町広瀬字沼田原
    (左岸)山口県岩国市錦町広瀬字長尾
  • 水系河川名二級河川錦川水系錦川
  • 事業名錦川総合開発事業平瀬ダム建設工事
  • 発注者名山口県
  • 受注者名清水建設・五洋建設・井森工業・ナルキ特定建設工事共同企業体
  • 型式重力式コンクリートダム
  • 規模堤高73.0m、堤頂長300m、堤体積340,000m3、天端標高EL162.0m
  • 全体工期2014年3月~2020年6月
施工中の平瀬ダム

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