ベトナムの枯葉剤汚染土壌を無害化へ

~当社技術による洗浄効果を確認~

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2016.10.17

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、ベトナムから日本国内に持ち帰ったダイオキシン汚染土壌、いわゆる枯葉剤汚染土壌に対する当社の土壌洗浄技術の有効性を確認する土壌洗浄実験を実施しました。その結果、同国の汚染土壌の大半を占めるとみられる汚染レベル20,000pg-TEQ /gの汚染土壌については、ダイオキシンの除去率が95%となり、洗浄した土壌のうち7割程度を再利用可能な1,000pg-TEQ /g未満の浄化土に再生できることを確認しました。

ベトナムでは、ベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤による汚染土壌が残っており、ダナン、ビエンホア、フーカットの各地区をはじめとするホットスポットが南ベトナムを中心に28ヶ所確認されています。こうした負の遺産の解消を目指し、2012年から米国国際開発庁がダナン地区で汚染土壌の浄化に取り組んでいます。

当社は2014年4月、日本国内においてダイオキシン専門の土壌洗浄事業の運営経験と累計300万tにも及ぶ汚染土壌の処理実績がある当社技術について、枯葉剤由来のダイオキシン汚染土壌への適用性に関する調査に着手。15年5月からは、ベトナム国内で簡易実験による洗浄可能性調査を実施。また、15年11月には、ベトナム政府機関の要請により、ハノイ市で開催されたベトナム政府関係機関主催のダイオキシンに関する国際シンポジウムにおいて当社洗浄技術を発表しました。同国資源環境省、科学技術省、国防省から高い評価を受けるとともに、同国の枯葉剤汚染土壌の本格的な洗浄可能性調査の依頼を受け、ビエンホア地区で回収した汚染土壌を日本国内に持ち帰り、16年2月から土壌洗浄実験を進めてきました。

持ち帰った汚染土壌は、汚染濃度別に6,600、12,000、24,000、32,000、57,000pg-TEQ /gの 5試料、各20~25kgです。土壌洗浄実験では、ダイオキシンは63µm未満の粘土・シルト分に偏在していること、洗浄・再利用可能な粒径63µm以上の砂分は全体の65~70%であることが判明しました。

当社の洗浄技術は、汚染土壌を分級(篩い分け)し、粒子の大きさに合わせて水洗いや擦り洗い、泡表面に汚染物質を付着させて除去するフローテーションなどを行います。フローテーションは当社独自の洗浄プロセスであり、今回の実験により枯葉剤由来のダイオキシンを泡表面に付着しやすくする薬剤を見出すことができました。これが奏功し、ダイオキシンの除去率を95%まで高めることができました。

ダイオキシン汚染土壌の無害化処理には、熱処理(1,000℃以上)がありますが、処理コストが高く、厳しい排気ガス管理が必要になっています。当社による土壌洗浄処理は、低コストで排水、排気ガスの心配もありません。洗浄処理により、汚染土壌の大半を占めるとされる20,000pg-TEQ /g以下の汚染土壌の70%近くを再利用可能な土壌に再生し、残りを熱処理・無害化処理すれば熱処理単独の1/2程度のコストで無害化処理できる見込みです。

当社は今後、ベトナム政府及び関係者に土壌洗浄技術の有効性に対する理解を促すとともに、パイロットテストの実施や大規模な浄化事業の実施などの可能性について広く検討を進めていく考えです。

なお、10月19日(水)~21日(金)に東京ビッグサイトで開催される「2016土壌・地下水環境展(Exhibition for Geo-Environmental Restoration 2016)」に本洗浄技術を出展します。

以上

≪参 考≫

ベトナムで実施した洗浄可能性調査
(泡表面にダイオキシンを付着させるフローテーションの模様)

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