建物の自然換気性能を3次元解析

~中間期には自然換気による空調を展開~

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2016.02.19

清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、設計初期段階において建物の自然換気性能を評価する3次元シミュレーションシステム「VisualNETS-3D」を開発・実用化しました。このシステムは、2000年に開発した2次元モデルをバージョンアップしたものです。建築物の実態にあった3次元のシミュレーションを行うことにより、一層効果的・経済的な自然換気方式の提案が可能になった結果、建設地や建築計画によって異なりますが、空調に要するエネルギーを最大20%程度削減できる見込みです。

東日本大震災を契機に、省エネルギーに対する意識が高まるとともに、経済産業省は2014年の「エネルギー基本計画」の中で、新築建物については2030年までに平均でZEB(Zero Energy Building)の実現を目指すと公言しています。ZEB化には建物のエネルギー消費の半分を占める空調のさらなる省エネが不可欠です。その実現には自然エネルギー利用がカギを握るとされ、中でも自然換気に対する期待が高まっています。

自然換気は、建物の屋外風の風圧や建物内外温度差による差圧を利用して、外気を建物内に取り込む冷房方式です。近年のオフィスの空調は春・秋とも冷房となっており、中間期と呼ばれる4~5月と10~11月の4カ月は外気温がオフィス内の温度よりも適度に低くなるので、外気をオフィス内に取り入れる自然換気により冷房することが可能です。

従来は、2次元シミュレーションで建物の自然換気性能を評価していましたが、建物の空間全体を捉えた評価が行なえなかったこと、特定の断面でしか評価結果を可視化できなかったことから、3次元のシミュレーションを行うVisualNETS-3Dを開発し、解析精度を飛躍的に向上させました。開発に当たっては、3次元の解析モデルを容易に構築できるように、システムとBIMデータの連携を図ったことが大きな特徴です。

VisualNETS-3Dの使用手順は、初めに設計者がBIMデータを利用して建物の3次元形状を入力します。続いて各部屋の形状、窓・換気開口の形状・仕様、空調・換気設備による給排気の位置・風量、さらには各部屋の在室人数・時間帯、照明電力量と点灯時間、換気開口の開閉スケジュール、空調・換気設備のオン・オフスケジュール等、室内の温熱環境に影響を与える条件を入力して、解析用の3次元モデルを構築します。自然換気に影響を与える気象条件は、日本全国の拡張アメダス気象データや世界主要都市のEPWデータをベースに、建設地の時々刻々の気温、日射量、風向き、風速の変化などがシミュレーションに反映される仕組みになっています。

3次元モデルの構築からシミュレーションに要する時間は3時間程度です。設計者は、室内の温熱環境に影響を与える条件設定を変更しながらシミュレーションを重ねることにより、最適な自然換気計画、つまり中間期の冷房を極力、自然換気で行う建築計画を提案します。当社は今後、「VisualNETS-3D」を全国の設計部門へ水平展開し、建物の省エネ性能を一層高めていく計画です。

以上

≪参 考≫

EPWデータ
米国エネルギー省が公開している建物エネルギーシミュレーションプログラム用に整備された世界主要都市の気象データ。WEBサイトから無償でダウンロードできる。

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