建物の安全性を震災発生後に即時評価

~「安震モニタリングSP」を提供~

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2016.02.18

清水建設(株)<社長 宮本洋一>は、首都圏に甚大な被害をもたらすことが懸念される首都直下地震や南海トラフ巨大地震等の大地震に備え、地震発生後即時に建物の安全性(継続使用の可否)を高精度に評価するモニタリングシステム「安震モニタリングSP」を開発しました。本システムについて、日本建築総合試験所から評価性能を認定する建築技術性能証明を取得しており、今後、鉄骨造ビルへの積極展開を図ります。

東北地方太平洋沖地震では、首都圏において大量の帰宅困難者が発生した教訓から、内閣府により、一時避難場所として建物の提供をうながす帰宅困難者対策ガイドラインが2012年に作成されました。ガイドラインでは、大地震発生後の建物の安全性、つまり継続使用の可否の速やかな判断を建物管理者に求めていますが、その判断には熟練の構造技術者による現地調査が欠かせません。一方、震災時には交通網が分断されるうえ、調査にあたることができる構造技術者が限られてしまうので、現地調査は容易ではありません。

そこで当社は、大地震発生後即時に建物の安全性を評価できる安震モニタリングシステム(プロトタイプ)を開発し、2012年から適用を進めてきました。今回の安震モニタリングSPは、システムの評価精度を一層高めたものです。新システムの構成は、従来システム同様、わずか4台の加速度センサーとセンサーの記録を自動的に解析するソフトから構成されますが、ソフトに従来の簡易解析機能に加え、建物の構造設計に用いる時刻歴応答解析を行う高精度解析機能を加えたことが特徴です。適用対象は、都心に集積するオフィスビルの大部分を占める、新耐震基準で設計された5階建て以上の鉄骨造ビルです。適用建物では、センサーを建物の基礎位置と最上階に各1台、地上階を3等分する位置に残る2台、ソフトを組み込んだパソコンは防災センター等にそれぞれ設置します。

地震発生時には、簡易解析は4台の加速度センサーが記録した加速度をもとに、高精度解析は基礎位置で記録された加速度による時刻歴応答解析の結果をもとに、建物各階の層間変形角(各階間の水平方向の変形量/階高)を推定します。最も大きな変形角が推定された階の値を基準に、変形角が1/200以下の場合は「安全・継続使用可」、1/200~100の場合は「注意、ただし継続使用可」、1/100~75の場合は「危険・一時避難」、1/75以上の場合は「危険・避難」と判定します。判定結果は、地震の揺れの収束後、わずか1分程度でアウトプットされます。

なお、このシステムが備えている学習機能も特徴の一つです。地震が発生するたびに、4台の加速度センサーによる実測値をもとに簡易解析用の建物モデルを自動修正するとともに、システム導入後に構造躯体が地震で受けた影響(損傷)を累積値として記録し高精度解析に反映します。特に大地震発生時には、本震による影響を踏まえて余震の影響を評価する必要があるため、この機能により、安全性評価の信頼度が格段に高まります。

本システムのプロトタイプは、すでに7棟のオフィスに導入されています。当社は今後、新築のオフィスビルについては本システムの標準装備を推奨し、既存オフィスビルと併せて年間20棟程度への導入を目指します。導入費用は、当社設計施工の新築物件で800万円程度からとなります。

以上

≪安震モニタリングSPのシステム概要≫

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