グラベルサポート工法の適用実績が20件を突破

~液状化被害をローコストで抑制~

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2016.01.13

清水建設(株)<社長 宮本洋一>は、先に開発・実用化した小規模施設・外構向けローコスト液状化対策工法「グラベルサポート工法」の採用を発注者に対して積極的に提案してきた結果、その効果とコストパフォーマンスが高く評価され、開発から4年足らずの間に適用実績が20件を超えました。

東日本大震災では、建物本体が被害を受けなくても、原料、動力、水などを供給する屋外の小規模付属施設や資材等の搬出入に用いる構内道路・駐車場が液状化被害により機能を喪失した結果、多くの物流施設や生産施設、病院、集合住宅などで必要な機能を維持できなくなりました。これを契機に屋外の付属施設や外構に対する液状化対策の必要性が改めて認識され、それがグラベルサポート工法の開発のきっかけとなり、引き合いの増加に直結しています。適用実績24件の用途別内訳は、生産・物流施設10、病院4、集合住宅6、事務所他4となります。うち、既存施設への適用実績は4件です。

この工法の具体的な適用対象は、屋外受変電設備や受水槽、原材料タンク、配管ラック、小規模倉庫などの小規模施設や構内道路、トラックヤード、駐車場などの外構施設で、新設・既存を問わず適用できます。特長は、小規模施設であれば基礎外周直下とその周囲の地盤を小粒径の礫により改良、外構施設であれば地表面付近を一定間隔で帯状に礫で改良するだけで、液状化被害を大幅に抑制できることです。この効果は、礫が液状化時に地下水を地表に逃がし、地下水圧の上昇を抑制する役割を果たすことによります。地表付近の簡易な地盤改良で済むので、液状化層の厚さにもよりますが、コストは従来の対策工法の1/3~1/10となります。既存施設に適用した場合は、対策工事中も施設を継続使用できます。また、重機を使わなくても済むので、既存基礎周囲に幅1m程度の敷地しか確保できないような狭隘な空間での施工も可能です。

施工方法は、新設の小規模構造物の場合、基礎外周沿いに溝状に礫を敷き詰めた透水性の高い、幅1m程度、深さ30cm~1m程度の「礫溝」を形成した後、施設の基礎の端部が礫溝上に位置するように基礎を構築します。既存構造物の場合、既存基礎周囲に礫溝を設け、基礎幅を50~80cm程度拡幅して、礫溝上に拡幅した基礎端部が位置するようにします。地表面付近が粘性土層で液状化層が深い位置にある場合には、基礎外周に沿って液状化層に達する礫のドレーンを必要本数追加することで対応できます。基礎全周に対策が行えない場合でも、基礎の二辺もしくは三辺への対策で効果を発揮させることも可能です。外構部の場合、一定間隔で礫溝を設け排水枡などで地表への排水を可能にする機能を付加することで対応できます。

内閣府が南海トラフ地震による長周期地震動の予測を発表したことを受け、被災想定地域に集中する生産施設群などにおいて地震被害対策が進むことが想定されます。当社は引き続き、グラベルサポート工法の採用を積極的に提案することで、対策コストとの見合いから液状化対策が遅れていた小規模施設・外構の液状化対策工事の受注を目指すとともに、大規模工事の受注にも結び付けていく考えです。

以上

≪参 考≫

液状化による既存施設の傾斜原因は、基礎外周の地表部を起点に地中方向に生じる「すべり面」という大きなひずみにあり、起点の発生さえ抑止すればすべり面の発生を防止できます。これは、当社が実証実験を繰り返して検証した結果です。グラベルサポート工法を適用すると、大地震時には、礫溝から地下水が地上に排水されるので、基礎外周近傍においては液状化の原因となる地盤内の水圧上昇を抑制でき、「すべり面」の発生を確実に防止できます。工法の適用対象は、重量が約5t/m2以下、短辺幅が約15m以下の施設とし、居住目的の構造物は適用対象外とします。

グラベルサポート工法の適用イメージと適用事例(キューピクルと受水槽)

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