都市の水辺を豊かに

~汽水域でも緑化できる植生浮島を開発~

  • 環境

2016.01.19

清水建設(株)<社長 宮本洋一>は、都市の水辺の景観の向上や生態系保全を目的に、淡水と海水の混じり合う汽水域の水面を緑化する植生浮島を製作、このほど緑化性能と耐久性を実証する実験を終了しました。実証実験では東京都中央区の協力を得て、同区佃の石川島公園船溜まりに、2010年と2011年に異なる浮力材料を使用した植生浮島を3基ずつ設置し、継続調査を実施。その結果、汽水域での植生浮島としては、初めて19種類の在来種による長期的な緑化を実現するとともに、カルガモの産卵や昆虫の生息などを確認しました。

水域を有する自治体の多くは、河川や運河などの水辺を中心とした都市緑化を計画しています。しかし、大部分の水辺は汽水域で、しかも直立護岸が多く、塩害や維持管理の難しさなどから長期的な植栽維持が難しく、かつ、植栽の種類も限られています。従来から植生浮島はありましたが、淡水域を対象にした仕様になっていました。

そこで当社は、まず2010年に耐久性木材とウレタン樹脂を浮力材料とする基盤(1.8m×3.8m:2基、1.6m×1.8m:1基)を、2011年にポリエチレン/ポリスチレン複合樹脂を浮力材料とする基盤(2m四方:2基、1.2m×1.7m:1基)を築き、その上に軽量土壌(パーライト系土壌)、熱融着培土(壁面緑化システム「パラビエンタ」に使用する固化培土)の順に重ねた層厚12cm~36cmの浮島を製作。耐塩性の高いハマボウやヨシなどの在来種の植栽植物19種(木本9種、草本等10種)を選定・植栽し、植栽基盤の飛散防止・固定化のために、土壌表面をメッシュ金網で覆いました。

その結果、いずれの浮力材料とも劣化・破損がなく長期的な水辺緑化に使用できること、カルガモ等の鳥類や、昆虫類の生息により生物多様性が向上すること、軽量土壌と熱融着土壌は保水性がよく潅水手間が少ないこと、透水性が高く塩分が蓄積しにくいこと、などが確認されました。

実験終了後、植生浮島は廃棄予定でしたが、近隣住民から親しまれていたことから、この程、中央区に譲渡の上、継続利用されることになりました。今後は、汽水域の水辺の景観の向上や生物多様性の保全ができる施設として、湾岸域などの開発や再生事業へ提案・展開していきます。

以上

≪参 考≫

植生浮島の実証実験風景

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