超低収縮コンクリート「ゼロシュリンク」が威力を発揮

~ひび割れのない意匠性の高いコンクリート擁壁を実現~

  • 建築

2015.07.02

清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、いすゞ自動車(株)新研修センター「ものづくりサービストレーニングセンター」(神奈川県藤沢市)の擁壁に適用した超低収縮コンクリート「ゼロシュリンク」について、優れたひび割れ防止効果を確認しました。打設後、すでに半年以上が経過していますが、擁壁表面にはひび割れの前触れとなるヘアクラック等の性状変化は認められていません。

鉄筋コンクリート造の主なひび割れの発生原因は、乾燥して収縮しようとするコンクリートを鉄筋などが拘束し、コンクリートを引き裂くような力が作用することです。このため、鉄筋コンクリート擁壁を築く場合、ひび割れの発生を見越して、任意の方向に凡そ3mピッチでひび割れを発生させる誘発目地を設けます。発生したひび割れは目地を埋めたシーリング材により隠されます。ただ、美観を優先し誘発目地を設けない意匠壁の場合、ゼロシュリンクのような乾燥収縮しないコンクリートを採用しない限り、ひび割れが発生して美観を損なうとともに、耐久性も低下させてしまいます。

「ものづくりサービストレーニングセンター」は、分散していた研修機能の集約とものづくり力の強化を目的に計画され、2014年12月に竣工しました。ゼロシュリンクを初適用した鉄筋コンクリート製の擁壁は、幅15m、高さ4m、厚さ0.31mで、センターのエントランスに続く外階段に沿って設けられています。当社は発注者の要望「長期にわたり美観や機能を維持し、かつメンテナンスの負荷が軽減可能となる高品質な擁壁」を具現化するために、ゼロシュリンクの採用を提案したところ、ひび割れ防止効果により誘発目地のない優れた美観と高い耐久性を実現できることが評価され、採用に至りました。打設時期は14年10月、打設量は約20m3です。

なお、2012年の開発後、技術研究所の新材料実験棟と多目的実験棟の低層階床・外壁に打設した約230m3のゼロシュリンクは、すでに2年以上が経過していますが収縮ゼロの状態を維持しています。技術研究所やいすゞ自動車(株)での実績が評価され、すでに次の適用案件も内定しています。コンクリートの打放し外壁を採用するオフィスビルで、2016年5月頃からゼロシュリンクが大量打設される予定です。今後、意匠を優先するコンクリートの打放し壁や機能性が重視される倉庫・工場などのスラブへの適用増が期待されます。

以上

≪参 考≫

1.ゼロシュリンク

コンクリートの乾燥収縮を極力防止した上で、わずかに生じる収縮を膨張材による初期膨張効果により事前に相殺し、収縮を実質ゼロにしたコンクリートです。乾燥収縮を防止するため、セメントは比較的収縮量が少なく、初期の温度収縮も低減できる中庸熱ポルトランドセメントを、骨材は吸水率が低く、殆ど収縮しない石灰岩を採用、収縮低減剤については保水効果の高いものを採用します。膨張材については膨張量の制御だけでなく、コンクリート内部に働く膨張力で収縮力を相殺するという見えない世界での評価も必要になり、実験と当社独自の膨張効果予測手法による検討を重ね、配合量を確定します。

2.ものづくりサービストレーニングセンターの工事概要
  • 所在地神奈川県藤沢市土棚8番地
  • 発注者いすゞ自動車株式会社
  • 設計者株式会社坂倉建築研究所
  • 施工者清水建設株式会社
  • 規模・構造4階建て、建築面積4,243.2m2、延床面積11,546.47m2
    実習棟‐SRC造、教育厚生棟‐RC造
  • 竣工2014年12月
いすゞ自動車(株)ものづくりサービストレーニングセンターの擁壁

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