MIYUKAの位置検出機能をバージョンアップ

~技術研究所内に実験ヤードが完成~

  • エンジニアリング

2015.05.11

清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、建物内を移動するロボットの位置検出システム「MIYUKA」のバージョンアップを図るとともに、技術研究所・多目的実験棟内のMIYUKA実験ヤードにおいて実用化に向けた本格的な実証実験を開始しました。現在、輸送機器メーカーのユニキャリア(株)と工場内で稼働する自動搬送台車への適用について、NHK放送技術研究所とバーチャルスタジオ内を移動するカメラの位置補正ツールへの適用について、それぞれ共同研究を進めています。

MIYUKAは、床表面にランダムにつけた黒点模様を読み取ることで、建物内を自由自在に移動するロボットの現在位置を瞬時に、かつ高精度に検出できるシステムです。黒ゴマを撒き散らしたようなパターン(模様)をつけた床とそのパターンを瞬時に読み取り位置検出する装置部から構成されます。床パターンは、9cm角あたり15~35、平均で25個程度の黒点をランダムにつけたものです。装置部は、産業用カメラと撮影部を照らすLED、撮影画像中の黒点の位置関係を床パターンのデータベースと照合し、画像の位置を算出する計算機から構成されます。データベースには、任意の黒点から半径約13cm以内にある黒点の位置関係がすべて入力されています。2010年に要素技術を開発して以来、これまで実用化に向けた課題を抽出し、その対応を図ってきました。

今回のバージョンアップの一つめのポイントは、毎秒の撮影・処理枚数を従来の約3倍の50~70カットとし、連続撮影した2枚の写真間に生じる黒点の動きを解析することで進行方向と進行距離を推定する機能、さらにはこの推定機能と従来の床パターンのデータベースへの照合機能を並列処理する機能を付加したことです。この結果、静止時の位置と方向の検出精度をそれぞれ1mm以下、0.5°以下の高精度に保ちつつ、位置検出が可能なロボットの移動速度を従来の2.5倍の10km/h、つまり人間の歩行速度の2倍にアップでき、検出精度の安定性も向上しました。2次元(平面)の位置検出機能のアルゴリズムはすでに完成域にあり、軌道が拘束されない自動搬送台車への適用に向けての残る課題は検出可能エリアの拡大に絞られています。

二つ目のポイントは3次元位置検出機能の開発です。2次元の位置検出では産業用カメラと床との距離を10cmに設定していますが、3次元で移動する移動体の位置検出では双方の距離を求める必要があります。そこで、産業用カメラと床の距離を算出するレーザ計測機の採用により、3次元の位置検出が可能になりました。バーチャルスタジオでは、実写とCGを合成した画像制作のために、放送用カメラの3次元位置制御が不可欠です。NHK放送技術研究所では、放送用カメラの最初のXYZ座標をもとに、カメラの現在位置を割り出すセンシングシステムを開発していますが、誤差が累積することが課題になっています。そこで、センシングシステムの位置補正ツールとして、3次元の絶対位置を検出できるMIYUKAの併用が期待されており、すでに複数のスタジオに試験的に導入されています。今後、センシングシステムとMIYUKAのコラボレーション機能を高め、位置検出精度を一層向上させる考えです。

以上

≪参 考≫

MIYUKAの位置検出機能搭載
ロボットの移動時に床の黒点を連続撮影しながら、黒点の位置関係をもとに自分の位置を検出する。従来のシステムでは、床上約10cmの位置から毎秒50~70カット、9cm角の床写真を連続撮影するとともに、瞬時に撮影した写真に含まれる黒点群の位置関係とデータベースを照合、一致する黒点群の床上の位置を検索し、ロボットの現在位置を検出。検出時間は0.020秒以内、位置精度は1mm以下、方向精度は0.5°以下で、位置検出が可能なロボットの移動速度は4km/h(人間の歩行速度程度)。
MIYUKAの位置検出アルゴリズム
人工衛星で使われている姿勢計測技術を応用したもの。宇宙空間では、恒星を撮影し、星図と照合することによりカメラの姿勢を算出する。MIYUKAでは、床の黒点を恒星、黒点の位置関係を星図に見立てている。
従来のロボットの位置検出システム
ロボット学会等では、建物内の床面に貼られたICコードチップを読み取ったり、レーザ光を水平に平面的に発振して壁などの形状を認識することにより、ロボットの位置を検出するシステムが注目を集めている。ただ、前者は自由な移動経路を選択できず、後者は広い空間やレーザ光を反射するガラスや鏡面がある空間では位置精度が落ちやすいという課題がある。

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