ローコストで既存小規模施設に液状化対策

~「グラベルサポート工法」を開発~

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2014.04.03

清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、屋外受変電設備や原材料タンク、外部配管ラック、小規模倉庫といった既存小規模施設向けの液状化対策工法として、基礎周辺地盤と基礎の簡易改良だけで液状化被害を抑制できるローコストの「グラベルサポート工法」を開発しました。特長は、工費が薬液注入を行う従来の対策工法の1/5~1/10程度で済み、対策工事中も既存施設を継続使用できることです。

生産施設や病院などでは、本体構造物が無被害でも、本体構造物に原料や動力、水などを供給する付属の小規模施設が液状化被害を受けると、操業や営業に大きな支障をきたします。南海トラフ地震をはじめ巨大地震の発生が懸念される中、被災想定地域には生産施設群などが集中するものの、小規模施設の液状化対策は、コストと対策工事中に施設が継続使用できなくなることが負担となり、あまり進んでいないのが実情です。

そこで当社は、ローコストで、工事中にも施設を確実に継続使用できる対策工法の開発に取り組みました。この工法開発には、対策範囲を必要最小限に留めることが不可欠のため、まず、既存施設が液状化により傾斜する際の地盤の状態を模型実験により究明。これにより、施設の傾斜原因が基礎外周の地表部を起点に地中方向に生じる「すべり面」という大きなひずみにあり、起点の発生さえ抑止すればすべり面が発生しない、という結論が得られました。

この結論をもとに開発した対策工法が「グラベルサポート工法」です。特徴は、基礎外周の地表付近の地盤に対策を施すだけというシンプルな点です。具体的には、基礎外周沿いに溝状に礫を敷き詰めた透水性の高い「礫溝」を形成した後、礫溝で施設の基礎を支持できるように施設の基礎幅を50~80cm程度拡幅するだけで済みます。礫溝の大きさは、施設規模により異なりますが、幅1m程度、深さ30cm~1m程度。液状化層が深い位置にある場合には、基礎外周に沿って液状化層に達する礫のドレーンを必要本数追加することで対応できます。隣接構造物等により基礎全周に対策が行えない場合でも、基礎の二辺もしくは三辺への対策で効果を発揮させることも可能です。

この工法を適用すると、大地震時には、礫溝から地下水が地上に排水されるので、基礎外周近傍においては液状化の原因となる地盤内の水圧上昇を抑制できます。対策範囲が限定的であり、液状化層全体を改良しなくても施設の傾斜被害を抑制できるので、液状化層厚が10mの場合の試算では工費が従来の薬液注入工法の1/5~1/10程度となり、かつ工時中でも施設を継続使用できます。適用対象は、重量が約5t/m2以下、短辺幅が約15m以下の施設とし、戸建住宅など居住目的の構造物は適用対象外とします。

本工法はすでに、西日本に位置する生産施設の既存屋外タンクへの適用が内定しています。同施設の直下には層厚10mの液状化層があり、液状化被害が懸念されていました。南海トラフ地震を想定したシミュレーションでは、本工法の適用により、基礎の傾斜は1/1000以下、周辺地盤との相対沈下は1cm以下に収まり、被災後も継続使用が可能という結果を得ています。工費は薬液注入による対策工法の1/6程度で済み、このコスト競争力が受注の決め手となりました。

以上

≪参 考≫

1.すべり面

液状化により傾斜が生じた基礎直下の地盤断面図

2.グラベルサポート工法の概念図

礫溝は基礎全周、あるいは基礎の二辺、三辺に設置することで対応可能。
図は、二辺に設置した状態。

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