夜間工事照明影響評価システム

「夜間工事照明影響評価システム」は、ダム工事等に用いる夜間工事照明が建設地周辺の生態系に与える影響を定量的にシミュレーションできるシステムです。本システムは、生態系の食物連鎖に着目し、昆虫類が照明に誘引され死滅することで失われる餌資源のカロリー量から、食物連鎖の中位・上位生物に与える影響の程度を定量的に算出するツールです。本システムにより、生態系に配慮した上で、費用対効果上、最適な夜間照明計画の立案が可能となりました。

概要

食物連鎖と本システムの基本的な考え方

建設地付近にクマタカ等の猛禽類の生息が確認された場合には、環境省の指針「猛禽類保護の進め方」に沿ってさまざまな対策を実施します。その一つが、夜間工事照明に集まる昆虫類を減少させるための対策です。蛾や甲虫等の昆虫類が照明に誘引され死滅することで、昆虫類を捕食するカエルやトカゲ等の餌資源が減少し、これらを捕食する鳥類や哺乳類、最終的には、食物連鎖の最上位生物である猛禽類にも影響を与えるものと考えられています。

夜間工事照明の事例
食物連鎖と本システムの基本的な考え方
食物連鎖と本システムの基本的な考え方

システムの評価フローとシュミレーション事例

  1. 現場周辺の水田・森林・草地等の土地利用状況、水銀灯・ナトリウム灯・LED灯といった照明の種類・光量とそれぞれの設置台数、使用期間等をシステムに入力します。
  2. これらのデータを基に、夜間照明に誘引される昆虫類の種類と質量が推定されます。
  3. その結果から、カエル等の中位生物が摂取できなくなる餌資源のカロリー量を算出。さらに、より上位の生物の餌資源がどの程度減少するかを順に推定します。
    最終的に、食物連鎖の頂点に位置する猛禽類1羽が生存していくために最低限必要な摂取カロリー量を1として、失われる猛禽類の餌資源を数値で表わすとともに、対策コストも算出します。これにより、猛禽類への影響を抑えつつ、経済的な照明計画を立案することが可能になります。

本システムによるシミュレーションの事例
<同一照度に設定した3ケースの比較シミュレーション結果>
A案 : 水銀灯100%
B案 : 水銀灯62%、ナトリウム灯34%、LED灯4%
C案 : ナトリウム灯58%、LED灯42%

誘引される昆虫類の推定結果
誘引される昆虫類の推定結果
猛禽類に与える影響の程度と対策費用
猛禽類に与える影響の程度と対策費用
※指標が1未満であれば生息環境を大きく損なわないと評価

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