カーボンナノチューブの分散化技術

ナノ素材の代表であるカーボンナノチューブ(CNTs)の普及の鍵を握るCNTsの分散化技術を開発しました。この技術は、CNTsを高速気流中で衝突させることにより、バンドル(凝着)状態にある粒子を解きほぐし、球状粒子の集合体に変えることが特徴です。

CNTsは、1991年に飯島澄男博士により発見された物質であり、ナノテクノロジー・サイエンスの中心素材(物質の一次粒子の直径が100nm以下)として注目されている。

概要

CNTs分散化の研究と実験を重ねてきた結果、高速気流中でCNTsのバンドルを衝突させると、バンドルがほどけて球状粒子の集合体に変化し、すぐれた親水性(水中での分散性)が備わることを発見。この分散化技術を「高速気流衝撃処理法」と命名するとともに、最適な気流発生装置や気流速度、処理時間を求め、現在、特許申請中です。添加剤や溶剤、特殊な処理装置が不要なことから、CNTsの物性変化の防止と素材処理費用の削減が可能になります。

素材

太さがナノメートル(nm=10-9m)大の炭素繊維のチューブです。一重(単層)のチューブ(直径~2nm)と多層のチューブ(直径~80nm)があり、いずれも長さは最長で数mm、重量は鋼鉄の1/4 ~1/6程度ですが、引っ張り強度は鋼鉄の100倍、導電性は銅の1000倍もあり、「産業革命を引き起こす夢のナノ素材」と言われています。

高速気流衝撃処理

ファンの回転で高速気流を発生させる装置の中にCNTsを投入し、10分程度の間、100m/秒の回転気流によりCNTsに衝撃を与える処理方法です。この処理を施したCNTsは、バンドル状態がなくなり、直径が 1~5μm前後の球状粒子の集合体に変化します。親水性が向上する理由は、球状粒子の表面に酸素が付着し親水性の官能基(水酸基・カルボキシル基)が生じること、そしてゼータ電位(液体中に分散された粒子の分散安定性=凝集しにくさの指標)が上がることと考えています。また、この処理により、CNTsのかさ密度が未処理の場合の2~5倍になるため、容器などへの充填性が向上するとともに飛散防止にも貢献できます。

カーボンナノチューブの電子顕微鏡写真

従来のカーボンナノチューブ
従来のカーボンナノチューブ
高速気流衝撃処理により球状化したカーボンナノチューブ
高速気流衝撃処理により
球状化したカーボンナノチューブ

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