床制振システム(回転慣性型)

日本精工(株)と共に病院やホテル・大スパンオフィスの居住性の向上を目的に、歩行時の微小な床の上下振動を回転運動に変換して吸収するコンパクトで軽量な制振システムを共同開発・実用化しました。第1号を京橋に建設中の清水建設の新本社ビルに適用します。

なお、共同開発に当たっては、制振機構の構成や設置方法については清水建設が提案し、床の微振動に対して敏感に作動する高精度でコンパクトな制振装置を両社で共同開発しました。

概要

制振システム

制振装置本体とバネ部材からなります。本体は床の上下振動を回転運動に変換するボールねじ機構と、ボールねじに対して軸回り(直交方向)に回転する円形の回転錘(フライホイール)から構成されています。

大きさは2Lのペットボトル大で、重量はわずか10kg、うち錘の重量は4kg程度ですが、2t~4tの錘とばねを組み合わせた従来製品と同等の制振効果を発揮することが大きな特長です。一方のばね部材は、床の微振動を装置本体に伝える役割を果たします。本体の回転錘の直径と支持部材のばね定数を調整することで、装置と床の固有振動数を同調させます。

制振効果

わずかな重量の錘が大きな制振効果を発揮する理由は、錘が回転あるいは反回転し始める時に、非常に大きな力を必要とすることです。この原理を「慣性質量効果」といい、ちょうど自転車をこぎ始めた時に大きな力が必要になるのと同じ原理です。本制振システムでは、錘を床振動に同調させて繰り返し回転・反回転させることにより、錘の重量の500~1000倍に相当する大きな錘を設置した従来製品と同等の大きな力を発揮します。

制振装置本体の機構図
制振装置本体の機構図

床の微振動はばね部材を介して本体に伝わり、その振動がボールねじを上下方向に動かし、最終的には回転錘の回転運動に変換される。

メリット

  1. 重い錘を使用していた従来製品の1/2以下の50万円程度のコストで同等以上の制振効果を発揮でき、優れた居住性を確保できます。具体的な制振効果として、床の上下方向の揺れを5~6ガルから2~3ガルへと約1/2に低減できることを実証実験で確認しています。
  2. 必要となる設置スペースが従来の制振装置の1/4程度で済むため、天井内の設備配管等の妨げになりません。
制振装置の設置事例

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