第38回 製粉ミュージアム 本館

製粉業トップメーカーの日清製粉グループ創業の地、群馬県館林市に建つ製粉ミュージアム。すっきりとした外観の本館は、明治期に工場の事務所として使用されていた歴史的建造物です。当社はこの保存、再生に携わりました。

製粉ミュージアム本館 外観

創業期から残る唯一の建物

日清製粉グループの歴史は、1900(明治33)年に実業家 正田貞一郎氏が、前身となる館林製粉を設立したことに始まります。国内で緒に就いたばかりの機械製粉を推進し、製粉業の近代化をけん引した同社は、現在も食品業界において確固たる地位を築いています。

当社は、基幹工場となる鶴見工場など、お客様の大切な建物の工事に携わり、創業110年を記念した製粉ミュージアムも手掛けました。

製粉ミュージアムは、創業から現在までの歩みを時代を追って紹介する本館、最新技術などを紹介する新館、そして日本庭園から成ります。

歴史ある本館は、1910(明治43)年竣工。創業期から館林工場の事務所として使用されていた建物です。木造2階建て、瓦ぶきの屋根に下見板張りの壁をあわせた和洋折衷建築で、旧本社工場の部材を再利用して建設されました。(新築時の設計、施工はともに不詳)

その後、1970(昭和45)年に事務所から記念館に改修。以来、創業者の想いと歴史を継承する施設として、多くの人に親しまれてきました。

当社初の木造免震レトロフィット

2010(平成22)年、100年の時を経た建物を保存再生し、ミュージアムとして再整備するプロジェクトが始動しました。既存の構造体および内外観を保存するため、耐震改修には免震レトロフィット工法を採用。木造建築物への適用は、当社初の試みでした。

工事は建物上部を曳家(ひきや)したうえで、既存基礎の下部に、鉄筋コンクリートの人工地盤を新設。その下に免震装置を設置する基礎免震形式としたことで、創建当時の貴重な部材を生かした改修が実現しました。

外壁の塗装や室内を彩るしっくい彫刻の保存は、入念な調査を行い、経年の風合いを残しつつ創建当初の姿に復元。工事を終えてよみがえった本館は、優れた展示施設としてだけでなく、その保存改修手法でも高い評価を受けました。

館林市の近代化の象徴でもある製粉ミュージアム本館。館内に展示する資料とともに、建物自体が企業の文化と歴史を語りかけてきます。

建物概要

所在地 :
群馬県館林市栄町6-1
保存改修 :
2012(平成24)年
受賞歴 :
耐震改修優秀建築賞、BELCA賞(ベストリフォーム部門)