第30回 「清水組技術部設計建築作品集」

1915(大正4)年10月、個人経営形態であった清水満之助店は会社組織へと改組し、合資会社清水組を設立しました。これを記念して、「清水方建築家屋撮影」から15年ぶりとなる建築作品集が刊行されました。この作品集は、明治期から設計施工一貫体制に取り組んできた当社の軌跡を語る貴重な資料です。

「銀行之巻」「事務所之巻」2篇を刊行

この作品集の装丁は、A5サイズ大の横長紐綴じで、表紙の文字などに金色の箔押しを施した豪華なつくりです。
1905(明治38)年から1915(大正4)年に竣工した建物から主要なものを選び、「銀行之巻」は銀行建築53件、「事務所之巻」は事務所、学校、病院、商店など39件を収録しています。

建物の写真、彩色設計図を版下とした図面を大きく取り入れ、建設地や建坪、工期、構造などの建物概要は、目次に記載されています。

タイトルの通り、設計は全て清水組技術部によるものです。技術部とは、明治20年代初期に設置した設計部門の前身である製図場(せいずば)の、1897(明治30)年頃からの呼称です。技術部は、1916(大正5)年に設計部に発展し、現在に至っています。

「清水組技術部設計建築作品集銀行之巻」(上)と
「事務所之巻」(下)

建物概要が記された目次

設計部門の発展

作品集の巻頭にある緒言には、設計施工一貫体制でお客様の信頼に応えてきた当社の軌跡が、いくらかの自負を込めて、次のように記されています。

「(前略)単(ひと)り工事そのものゝ請負に止らず、各種建築の意匠、材料強弱の計算、電灯暖房、室内装飾の考案、門墻壁(しょうへき)の如き附属物の設計等、何れも弊社は参拾余年の経験と特別なる技能とを以てし、聊(いささか)も顧客各位の信頼に悖(もと)らず、其任を完うしたる(後略)」

製図場の設置当初から、積極的に取り組んできた近代洋風建築には、従来よりも専門的で高度な設計技術が求められました。
そのため、当社は最先端の建築技術や構造を取り入れ、設計技術の向上に力を注ぎ、設計部門を発展させていきました。
「銀行之巻」に収録されている1914(大正3)年竣工の森村銀行本店では、現在の設備設計図の原形ともいえる暖房装置の配管図や、電灯の配線図が描かれました。
この作品集は、お客様の要望に応えるため、新しい設計技術に挑み続けた、清水組技術部の成果の集大成なのです。

森村銀行本店(「銀行之巻」収録)