地中連続壁の「リアルタイム施工管理システム」を開発

~掘削形状を3次元に可視化して作業効率を向上~

  • 土木
  • 構造

2020.10.13

清水建設(株)<社長 井上和幸>は、このほど地中連続壁の掘削作業の一層の効率化に向け、地中での掘削機の位置・姿勢と掘削形状をリアルタイムに3次元で可視化できる「リアルタイム施工管理システム」を開発しました。このシステムを活用することで、掘削工程のサイクルタイムを従来比で20~25%、コストを10%以上削減することが可能になります

都市圏で計画される大規模プロジェクトでは、地中連続壁が採用されるケースが増えています。大深度地下を利用して道路や鉄道を建設する場合に必要な巨大な立坑、敷地境界に沿って大規模な根切りを行う場合の土留壁は、いずれも地中連続壁で構築されます。施工にあたっては、専用の掘削機を用いて概ね3m×2m程度の溝を掘削しては鉄筋籠を建て込み、コンクリートを打設する作業を繰り返すことから、生産性の向上には掘削作業の効率化が欠かせません。

掘削作業は、クレーンで吊り下げた掘削機により行います。掘削機は、所定の位置にセットされると、自重により地中に向かって掘進し、オペレータはモニターに表示される掘削機の底面と掘削計画線が一致するように掘進方向を制御します。しかし、地盤の固さなどの条件が不均一のため、計画線通りに掘進するのは難しく、掘進中に掘削形状を確認する方法もありませんでした。

そこで当社は、掘削機の位置・姿勢と掘削形状を3次元で可視化し、かつ掘削断面に欠損が生じている個所を色分け表示する機能を備えた「リアルタイム施工管理システム」を開発しました。掘削機の位置・姿勢は、地上に設置した計測器と掘削機をつないだ2本のワイヤーの吊り元の水平座標、ワイヤーの巻き出し長、掘削機に設置した傾斜計等の計測データから求めることができます。掘削機の位置・姿勢の3次元データをストックしていくと掘削形状の可視化が可能になります。オペレータは掘削断面に欠損が生じた場合は都度、再掘削することで設計通りの掘削断面を確保できます。

従来も、同様の計測データを収集していましたが、2次元での可視化に留まっており、かつ計測データをストックしていませんでした。このため、掘進中に掘削形状を確認できず、所定の深度まで掘削すると、一旦掘削機を地上に引き揚げ、超音波計測器を溝に挿入して掘削形状を計測し、必要に応じて再掘削していました。リアルタイム施工管理システムを活用することで、こうした作業がなくなるため、生産性が大幅に向上します。

当社は今後、「リアルタイム施工管理システム」を地中連続壁の採用現場に水平展開し、掘削作業を効率化していく考えです。

以上

≪参 考≫

「リアルタイム施工管理システム」が示した3次元の掘削形状

「リアルタイム施工管理システム」が示した3次元の掘削形状
青は掘削不足、赤は掘削過剰を示す。

掘削機と計測器

掘削機と計測器

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