トンネルの維持保全にもタフネスコート

~覆工コンクリートの剥落防止効果を検証~

  • 土木

2015.11.06

清水建設(株)<社長 宮本洋一>は、このほど、(公財)鉄道総合技術研究所<理事長 熊谷則道>、三井化学産資(株)<社長 齋藤 周>と共同で、コンクリート構造物の諸性能の向上に絶大な効果を発揮する技術「タフネスコート」がトンネル覆工コンクリートの剥落防止工法として有効であり、実工事に適用可能であることを検証しました。

タフネスコートは、清水建設と三井化学産資が共同開発したもので、コンクリート構造物の表面にポリウレア(強度25N/mm2、伸び性能200%)という樹脂を数ミリの厚さで噴き付けるだけで、構造物の耐衝撃性や耐久性等の諸性能を向上させる画期的な技術です。これまで高速道路のコンクリート製防護壁や堤防の維持・保全工事への適用に向けた実証実験を実施し、設計手法の確立に向け各種データを収集・蓄積してきました。

清水建設(株)と三井化学産資(株)は、かねてよりタフネスコートの効果の一つであるコンクリート構造物の剥落防止効果に着目。一方、鉄道総合技術研究所は、鉄道トンネル内で経年劣化等により覆工コンクリートが剥落すると大事故につながりかねないことから、効果的な維持・保全工法の開発に取り組んできました。今回の共同検証は、こうした両者の思惑が一致して実現したもので、2014年8月に着手しました。

トンネル覆工コンクリートの剥落防止工法としてタフネスコートを適用する場合、コンクリート表面を清掃し、プライマー塗布の後、ポリウレアを厚さ(塗膜厚)1.5mm以上になるように噴き付けるだけで済みます。非常に手軽な工法ながら、ポリウレアの付着強さが剥落防止効果の目安となる1.5N/mm2以上になります。従来の剥落防止工法と異なり、コンクリートの劣化による剥落だけでなく、コンクリートの変形やひび割れによる剥落まで防止でき、かつ経年劣化しにくいことは大きなメリットです。

剥落防止効果の検証にあたっては、室内実験と試験施工を実施しました。まず、2014年9月に実施した室内実験は、鉄道総合技術研究所が所有する大型トンネル覆工載荷試験装置を用いて実施。装置内に構築した1/5スケールのトンネル覆工コンクリート(内径1.85m、奥行300mm、厚さ150mm)の試験体表面をタフネスコートで被覆した後、試験体に載荷しました。その結果、試験体にひび割れや大きな変形が生じても、タフネスコートがコンクリート片の剥落を防止できることを確認できました。

一方、試験施工は北海道旅客鉄道(株)の協力を得て、休止線となっているトンネル内において本年7月に実施。その結果、手軽に施工できたこと、覆工コンクリートからの漏水の有無、下地処理方法の違いがあっても所定の塗膜厚(1.5mm以上)と付着強度(1.5N/mm2以上)を確保できたことから、タフネスコートによる剥落防止工法はすでに実用化レベルにあると判断しています。

当社は今後、タフネスコートの施工設備のコンパクト化などを含む施工性の一層の向上、コンクリート以外のトンネル覆工体への適用に取り組む予定です。

以上

≪参 考≫

1.室内実験の模様

2.試験施工状況

覆工コンクリートのクラウン(トンネル頂部)に設けた幅2m、奥行1mの施工部位6か所に対して、下地処理(清掃)を施した後に、プライマーを塗布し、ポリウレアを噴き付け。下地処理の方法は、ウェスによる表面清掃(5回拭き)、圧搾空気による表面清掃(5回吹き)、ディスクサンダーによる表面清掃の3パターンで、漏水箇所と非漏水箇所に分けてそれぞれ実施。漏水箇所については導水処理を施し、多少滲む程度の漏水に対しては、下地処理の前に表面をチッピングした上で止水セメントにより止水処理。試験施工終了後に行った付着強度試験では、6カ所すべてについて設計基準値の1.5N/mm2以上の付着強度を確認した。

休止線トンネル坑口の状況
移動式高所作業車を使った施工状況

下処理状況

Case1:ウェスによる下地処理
Case2:圧搾空気による下地処理
Case3:ディスクサンダーによる下地処理

ポリウレア噴き付け終了後の状況

左からCase1,Case2,Case3

付着試験の状況

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