廃炉コストの削減に向け、コンクリートの放射化レベルを高精度評価

~廃炉ソリューションシステムを開発~

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2015.09.02

清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、原子力発電所の廃炉決定が相次ぐ中、廃炉コストの削減を目的に、原子力発電所の原子炉建屋に打設されている大量のコンクリートの放射化レベルを高精度に評価する廃炉ソリューションシステムを開発・実用化しました。現在、日本原子力発電東海発電所の廃炉検討に適用しており、今後、国内外の電力会社を対象に、コンクリートの放射化評価業務をはじめとする廃炉エンジニアリング業務の受注活動を本格化します。

廃炉にあたっては、放射化した大量のコンクリートの処分が大きな課題になります。このため、廃炉コストの削減には、廃炉計画時にコンクリートの放射化レベルを評価し、レベルⅡ、レベルⅢ、CL(放射性廃棄物として扱う必要のないもの)に精度良く分類することが重要です。その理由は、レベルⅡは300年間、レベルⅢは50年間の保管義務が課せられ、それぞれ特殊な保管の方法や施設が必要になるためです。110万kW級の沸騰水型(BWR)原子力発電所の廃炉では2,090m3の放射化コンクリートが発生し、うちレベルⅡが570m3、レベルⅢが1,520m3程度になり、処理・処分費用(解体工事を除く)だけでも50億円に上ると試算されています。

原子炉建屋に打設されたコンクリートの放射化レベルの決定因子は、原子炉および建屋の形状、コンクリート中の元素成分で半減期が比較的長いコバルトとユーロピウムなどの含有量、原子炉の運転履歴、炉心での燃料の燃焼度、核分裂の状況(中性子の発生量)、生成した放射性物質の半減期などです。本システムでは、これらの因子を勘案したうえで、コンクリートの放射化レベルの経時変化を3次元解析します。

システムの適用にあたっては、まず、図面情報や建屋部位の実測値から原子炉建屋のコンクリート部位の精緻な3次元幾何形状モデル(3次元モデル)を構築し、モンテカルロ法と呼ばれる解析手法を用いて3次元モデル内における中性子の挙動を求めます。続いて、原子炉の運転履歴をシステムに入力し、中性子の照射時間と半減期を勘案して、コンクリート中のコバルトとユーロピウムなどの放射性核種の生成量を算出した後、原子炉建屋全体のコンクリートの放射化レベルを3次元で解析・評価します。評価結果は容易に可視化でき、 原子炉建屋のコンクリートの任意の断面で各部位の放射能レベルを色分け表示できます。最終的には、原子炉周りのコンクリートサンプルの放射化分析を行い、評価結果と照合したうえでその妥当性を評価し、廃炉計画を策定します。

当社の試算では、本システムの評価結果をもとに適切な解体計画を立案すると、110万kW級の原子力発電所の解体では、概算結果に比べてレベルⅡ、レベルⅢの発生量をそれぞれ10%、処理費用にして5億円程度削減できる見込みです。

現時点で廃炉を決定している国内の商業用原子炉は、日本原子力発電の東海発電所、中部電力浜岡原子力発電所の1・2号機をはじめ8基あります。当社は、廃炉ソリューションシステムを武器に、廃炉エンジニアリング業務の受注拡大を目指します。

以上

≪参 考≫

評価結果の可視化事例(CG)

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