気象予報のノウハウを用いて、地下水流動評価を高精度化

~データ同化手法を応用した地下水流動解析技術を開発~

  • 土木

2015.07.17

清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、大規模地下構造物等の建設時に行う地下水流動評価の精度向上を目的に、逐次取得される地下水観測データを活用して、シミュレーション解析に用いる水理地質構造モデル(以下、解析モデル)を自動的に修正しながら、シミュレーションの予測精度を改善させる地下水流動解析技術を開発しました。本技術は、現象の予測が難しい気象分野で発展してきた「データ同化手法」を地下水流動解析に応用したものです。これにより、実現象を精度良く再現する解析モデルを合理的に構築することが可能となり、地下水流動評価の信頼性が大幅に向上します。

放射性廃棄物地層処分施設やエネルギー地下貯蔵施設等の大規模地下構造物を建設する際には、周辺地域の地下水環境に与える影響や、構造物に流入する地下水量を適切に評価する必要があります。地下水流動評価の精度は、シミュレーションに用いる解析モデルの精度に左右されますが、このモデルは情報量が限られる地質調査結果等から作成されるため、対象領域の地質構造や地質区分別の透水特性値等、モデルに入力するパラメータを適切に設定することは容易ではありません。結果として、シミュレーションの予測結果が実際の観測結果と大きく乖離してしまうケースが生じることがあります。

このため従来は、解析技術者が、予測結果と観測結果が合致するよう解析モデルのパラメータを修正し、予測精度を確保していました。この作業は試行錯誤の繰り返しとなるため大きな労力を要し、修正したモデルの精度も技術者の技量に依存することから、精度の高いモデルの合理的な構築手法が求められていました。

一方、今回開発した地下水流動解析技術は、観測結果に応じて複数の解析モデルのパラメータを修正しながら、実際の地下水流動を再現できる精度の高い解析モデルを構築するものです。具体的には、パラメータがそれぞれ異なる数百個の解析モデルを用いてシミュレーションを実行した後、予測結果が観測データと近似するよう解析モデルを自動修正するデータ同化アルゴリズムに基づき、各モデルのパラメータを更新します。このプロセスを、新たな観測データが得られるたびに繰り返すことで、各モデルのパラメータが適正な値に収束していき、再現性の高い解析モデルが構築されます。

本技術の性能をモデル実験で検証したところ、データ同化を用いない従来手法と比べて、解析誤差を約80%低減できることが分かりました。また、実際の地下構造物への適用実験では、従来の1/5程度の労力で高精度の解析モデルを構築できることが確認されました。

当社は今後、本技術の実用化に向けた研究に取り組み、地下水流動評価が不可欠となる放射性廃棄物地層処分施設等への適用を目指します。

以上

≪参 考≫

地下水流動評価におけるデータ同化の活用イメージ

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