
不動産開発
最先端の技術を結集し、新しい働き方に応える
「名古屋シミズ富国生命ビル」が竣工
地上16階建て、延床面積47,963m2の本物件は、名古屋・丸の内エリアにおいて10年ぶりとなる大規模オフィスビル開発です。当社、富国生命保険、清水総合開発の三社による共同事業として実現しました。
開発コンセプトは「多様な働き方に応える超環境配慮型オフィス」。
働き方に大きな変化をもたらしたコロナ禍での開発となったため、ワーカーの生産性やエンゲージメントを高める、次世代のフレキシブルな働き方を実現できるオフィスを目指しました。同時に、当社の最先端の技術を取り入れて環境にも配慮し、名古屋から「新しいオフィスの形」を提案しています。
サステナブル、かつゆとりのある執務室
基準階面積は約2,360m2と、名古屋市内のオフィスで最大級の広さを誇ります。
柱や梁などを室外に出すアウトフレーム工法により、フロアの完全無柱空間を実現しました。2.9mの天井高も相まって、ワーカーにフロア面積以上の広々としたゆとりを感じさせます。

フロアは最大12分割まで可能で、貸床区画の小割りを要望するテナントが多い名古屋のオフィス市況に対応しています。
執務室における大きな特徴は、エネルギー効率と快適性を両立する空調システムと、クライマーブラインド(下からせり上がってくる電動ブラインド)の採用です。クライマーブラインドは眺望を確保したまま日射の負荷を低減できるブラインドで、時間帯や日射の状況に応じて中央制御されています。
空調は放射空調とファンを組み合わせたハイブリッドシステムを採用。温度感知センサーにより負荷状況を自動で判断し、運転を最適化することで省エネルギーと快適性を両立します。
さらに、フロアの床に吹き出し換気システムを設置し、換気効率の向上を図っています。

アウトフレーム工法による建物外観の格子状の柱梁は、ひさしの役割も担っており、クライマーブラインドと合わせた日射の制限により、空調にかかるエネルギーの低減に寄与しています。

空調システムとクライマーブラインドの導入、構造体の特徴を活かして、オフィス内における環境配慮の好循環を生み出しています。
これらの技術により、本物件は名古屋の大規模賃貸用オフィスビルで初めての「ZEB Ready※1」と「CASBEE Sランク※2」の認証を取得しました。サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)にも採択されています。

※1 ZEB(Net Zero Energy Building)とは、快適な室内環境を保ちながら、⾼断熱化、⽇射遮蔽、⾃然エネルギー利⽤効率の⾼い設備を使用するなど、できる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電などによりエネルギーをつくることで、年間で消費する建築物のエネルギー量を⼤幅に削減し、エネルギー収⽀ゼロを⽬指した建築物です。BELS の評価制度において、「ZEB」、「Nearly ZEB」、「ZEB Ready」、「ZEB Oriented」の4段階があります。
※2 CASBEE建築評価認証は、CASBEE-建築(新築)などで評価された建築物について、その評価内容を審査し的確であることを第三者機関が認証する制度です。評価結果は、「Sランク」から「Aランク」、「B+ランク」、「B-ランク」、「Cランク」の5段階です。
充実した共用部
16階に設けたテナント専用ラウンジは、多様かつ生産性の高い働き方を支援します。開発を担当した藤嶋は「本物件は多方面から好評をいただいており、特にこのテナント専用ラウンジは、入居者からの反響が大きいです。過去に当社が開発したG-BASE 田町でも協力いただいた三井デザインテックをアドバイザーに加え、コロナ禍後の新しい働き方に対応すべく、共用部を充実させております」と語ります。

ラウンジはノースラウンジとサウスラウンジに分かれています。ノースラウンジは重厚感のある会議室が2室あり、システムから予約できます。

サウスラウンジには、車いす利用の方もスペースに余裕を持ってお使いいただけるオンラインブース、集中作業に適したフォーカスルームなどを設置し、個々のニーズに応える空間を提供しています。
さらに名古屋駅を望む屋外ガーデン、パークエリア、フォレストエリアといったリフレッシュに最適な空間を創り上げ、ワーカーにとってより魅力的な働き方を後押しします。

グループ会社を含めたオールシミズでの取り組み
本物件は計画・設計・施工・開発・リーシング・運用の各段階において、当社と清水総合開発・シミズビルライフケアが関わっています。
オールシミズとして取り組むことで、計画・設計・施工・開発段階より、リーシング・プロパティマネジメント業務・ビルマネジメント業務における管理運営を見据え、最先端の技術・知識・経験を盛り込みました。
具体的には、共用会議室を予約するための会議室予約システムや時間外空調の予約システムといった各種ビル管理の申請に使用する館内アプリ、ロボットを活用した清掃業務運営などです。
また、富国生命保険との共同事業も特徴の一つです。約4,800m2という広大な土地面積を確保できたことに加え、生命保険を扱う保険会社だからこその視点を取り入れました。
「16階のテナント専用ラウンジに設置したトイレ『Restroom for All』や、基準階に設置した二つのだれでもトイレなどは、富国生命保険からご提案をいただいたものです。お互いの特徴を活かして一つのものを作り上げることができるのも、共同事業の魅力だと思います」と主席マネージャーの佐怒賀は振り返ります。


入社4年目の濱田は、入社後の研修期間からプロジェクトに関わり、本配属後は主担当となりました。「当社へ入社したのは、ものづくりのプロフェッショナル達と一丸となって不動産開発、ひいては街づくりを行いたいと思ったからです。本件はまさに入社理由と合致した案件であり、本物件の開発を完遂できたことは大変貴重な経験となりました」と語ります。
投資開発本部の担当者として求められた点については「最終的な方針決定を行う事業者としての立場と、清水建設としての技術的・専門的な視点が求められました」と振り返り、「本物件は共同事業のため、他の事業者とのコンセンサスを図りつつ、当社の設計・施工部隊の挑戦したい内容を理解し、それを共同事業者に説明しました。同様に、共同事業者の意向や提案についても理解を深め、設計・施工部隊に共有しました」と話します。
その一例として、本ビルの10、11階に入居している清水建設名古屋支店の吹抜空間を挙げます。吹抜空間を設置したのは事業者ではなく、入居者である名古屋支店だったため、基準階の形状・構造を工事途中で変更しました。変更には、他の共同事業者の承諾を得る必要があったため、濱田は「名古屋支店の計画を実現すべく、事業者と入居者双方のメリットをまとめ、所有区分の調整・原状回復の考え方を整理しながら、吹抜空間の実現をサポートしました」と言います。
濱田は「ものづくりのプロである設計・施工・エンジニアリングなどの担当者から、さまざまな知識や技術を教えてもらいました。分野が違うさまざまなプロフェッショナル達と仕事をできたことは、本当に貴重な経験となりました。私も不動産開発のプロフェッショナルとなれるよう、新たな案件に取り組みたいです」と目標を語っています。

本ビルには多くの企業に入居いただいております。
そのうち、10、11階に入居している当社名古屋支店のコンセプトや取り組みを紹介します。
コンセプト
オフィスコンセプトは「人と人がつながる『コミュニケーションHUB』」。東海4県の活動の中心である支店の社屋として、ハード・ソフト両面から社内外の人々が出会い、つながるきっかけを創出するオフィスを目指しました。
コミュニケーションを促進させる仕掛け
執務空間はグループフリーアドレスを採用し、また建物4隅にはバルコニーを活かした、それぞれ特徴のあるラウンジ空間を設置しました。出入口周辺はタッチダウンスペース等を多く採用したコワーキングラウンジを設置し、それらをインテリアやデザイン等で緩くつなぐことで、メリハリのあるオフィス空間としました。
コンセプト「コミュニケーションHUB」を体現した最も象徴的なラウンジは、10、11階にまたがる吹抜空間「コミュニケーションフィールド」です。社内外の講演会や打ち合わせ、行事や懇親会など多様な用途に合わせフレキシブルに利用されています。
特徴は吹抜正面に設置した36面マルチディスプレイ。業務時間外にはヒーリング映像やTV放送などを流し、従業員のリラクゼーションやコミュニケーションの活性化を図っています。また業務時間中は、工事現場の映像をリアルタイムに流しており、現場とのつながりを体現しています。

東海4県のつながりを感じるオフィス
室内には、名古屋支店が管轄する東海4県の素材を多く採用しました。
エントランスでは、天井に愛知県産ヒノキの積層材を、受付とカフェカウンターの背面には岐阜県多治見市の美濃焼タイルを採用しています。
また、社外の方をお迎えする各応接室の名称は東海4県の旧国名とし、壁材に各県の特産品を使用、また応接机の天板には各県産のヒノキ天板を使用しています。

デジタルを活用した仕組み
執務室内には、従業員の生産性と創造性の向上を図るため、最新技術を取り入れています。
当社開発の建物管理システムDX-Coreは、各種設備とアプリケーションが連携し、働く人の快適性を高めます。社員の位置情報・スケジュール・連絡先を一元管理するだけでなく、従業員のノートパソコンやスマートフォンで、空調や照明の調整が可能です。時間帯別の各ゾーンの利用率や、会議室の混雑状況などもすぐに把握できるほか、人がいないゾーンは自動的に照明を暗くしたり空調を弱めたりするなどの調整も可能です。
VRルームは、これまで建設現場でしかできなかった検査や現物確認を、VR(仮想現実)を利用することで生産性向上につなげます。また、一品生産である建物・構造物のイメージを社内外に迅速に共有することができ、モックアップ製作に係る労力・コストの省力化や意思決定時間の短縮に寄与します。

名古屋支店の山下菫花は「新社屋に移転してから、コミュニケーションを活性化させるさまざまな仕掛けや吹抜け空間を利用した支店全体でのイベントや懇親会などの増加により、今まで関わる機会がなかった他部署の社員とのかかわりが増えました。旧社屋と比較して、在宅勤務より出社を選択する社員や、業務以外のカジュアルなコミュニケーションの増加が調査結果(芝浦工業大学・秋元孝之研究室と共同で調査を実施)として出ており、まさに支店コンセプトである『コミュニケーションHUB』を体感しています」と話します。

今後も清水建設は「真摯な姿勢と絶えざる革新志向により社会の期待を超える価値を創造し持続可能な未来づくりに貢献する」という経営理念を達成するため、グループ一体となりさらなる挑戦を続けていきます。
記載している情報は、2025年6月3日現在のものです。
ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。