
地域に密着した海外展開 進化する都市とともに ―シンガポール
シンガポールは、1965年の独立当初から、国土を最大限活用するために、建物の高層化を推し進めてきました。政府の強いリーダーシップの下で、上へ上へとスペースを拡大し続けた同国。半世紀を経た現在、世界有数の最先端都市国家に成長しています。
シンガポールへの進出
清水建設は、海外進出の黎明期である1973年、シンガポールに事務所を開設します。同国における記念すべき最初のプロジェクトは、三菱重工業の造船所の建家建設工事でした。当初は日本企業のプロジェクトを中心に取り組みましたが、1980年代に入り、シンガポール企業から超高層ビル「ゴールドヒルスクエア」を受注します。これが当社にとって海外初の超高層ビルの建設となりました。これを皮切りに、当社はシンガポール企業や政府発注のプロジェクトにも積極的に参画していきます。以来半世紀。同国の急速な発展と、それに伴い生じるさまざまな課題や期待に一つひとつ応えていくことで、当社は海外ビジネスの地力を養ってきました。

「ゴールドヒルスクエア」(現:ユナイテッドスクエア)
- 発注者
- Goldhill Development Pte Ltd
- 規模
- 地下1階、地上32階
延床面積88,127m2 - 竣工
- 1982年9月
PCa工法の普及に貢献「HDB大規模集合住宅」
1959年に始まった国づくりにおいて、シンガポール政府最大の課題は住宅の確保でした。1960年に住宅開発庁(HDB)を創設し、短工期で大量の住宅を供給可能な工業化工法を国外から導入、推進していました。当社は、ローコスト・短工期の集合住宅建設モデルを徹底的に追求し、1981年に15,000戸の大規模集合住宅プロジェクトを、日本企業として初めて設計施工で受注しました。
当社が採用したPCa工法は、現場近くに工場を建設して、床・梁・壁用のPCa版を生産するものでした。人手を要する現場でのコンクリート打設を鉄筋コンクリート柱のみにとどめ、あらかじめ工場で生産したPCa版を現場で組み立てることで、工期短縮と材料費・労務費のコストダウンを図りました。 HDBからの要請により、当社は工事完成後もこのPCa工場の稼働を継続します。2000年に閉鎖するまで、同工場はシンガポール全体で使用するPCaの2割を供給し続けました。建設技術者の指導・育成にも携わり、シンガポール建設業の工業化推進の一助となりました。

「HDB大規模集合住宅プロジェクト」
- 発注者
- Housing & Development Board (HDB)
- 総戸数
- 約15,000戸
- 工期
- 1982~1987年
オーチャードのランドマーク「ニーアンシティ」
シンガポールの商業中心地、オーチャード・ロードの真ん中に位置する「ニーアンシティ」も当社の施工です。この施設は1993年、当時東南アジア最大級の複合施設としてオープンしました。
キーテナントの高島屋は、開業時からここに店を構えています。世界トップクラスの高級ブランドや人気ファッションブランドが多数入居し、現在も多くの人々で賑わっています。
シンガポールの目抜き通りにおいて、その重厚な装いがひときわ存在感を放つランドマークです。

「ニーアンシティ」
- 発注者
- Ngee Ann Development Pte Ltd
- 規模
- 地下3階、地上27階 2棟
延床面積258,063m2 - 竣工
- 1993年1月
オーチャード・ロードと清水建設

1960年代までは、緑豊かな郊外だったオーチャード・ロード。1970年代に入ると高層ホテルの建設が次々と始まります。当社が「ニーアンシティ」を着工した当時は、この急速な開発の途上でした。ここから瞬く間にオーチャードは、「シンガポールの銀座」とも言われる繁華街へと変貌していきます。
その後も当社は、「ザ ヒーリン」(1996年)、「トリプルワンサマセット」(2009年)、「スコッツスクエア」(2011年)の施工を担当します。さらに 2010年代に入ると、「ウィズマアトリア」(ファサード改修/2012年)、「ショーハウス」(改修/2013年)、「268オーチャード」(2014年)と連続して複数のプロジェクトに取り組みました。
このように当社は、これまでオーチャード・ロードにおいて多くのプロジェクトに参画する機会に恵まれてきました。
今や東南アジア随一の目抜き通りとして知られるオーチャード・ロード。当社はその発展を、最も近くで見守ってきた海外企業の一つと言えるのではないでしょうか。

アジアの金融センターの象徴 「リパブリックプラザ」
CDB(中心業務地区)に位置する「リパブリックプラザ」は、シンガポールの摩天楼を代表する建物です。シンガポールで最も高いビルとして1995年に誕生し、2016年にその座を明け渡すまで、最先端国家の頂点として君臨し続けました。
「リパブリックプラザ」は黒川紀章氏による設計で、超高層を垂直に建てるため、宇宙からの3点測量を採用しています。また、当時としては目新しい本格的な鉄骨造の超高層であり、短工期での施工を可能にしています。
1997年には、世界不動産協会による「世界最優秀建築賞」(経営性と美しさを同時に兼ね備えた建築に与える賞)を受賞しました。

「リパブリックプラザ」
- 発注者
- CDL Properties Pte Ltd
- 規模
- 地下1階、地上66階
延床面積124,726m2
高さ280m - 竣工
- 1995年10月
戦略的開発拠点の中核「フュージョノポリス」
ワンノース地区には、情報通信技術、メディア、バイオメディカル、スタートアップ、エンジニアリング等の産業が集積しています。シンガポールの政府機関である JTC コーポレーションがマスタープランを策定、開発しました。
ワンノースの中心が、研究、開発、技術のハブであるフュージョノポリスです。基本設計は黒川紀章氏によるもので、事務所、サービスアパートメント、店舗、オーディトリアムからなり、地下鉄駅と接続しています。
施工にあたっては、あらゆる角度から建物を「見える化」するために、3Dを活用。問題の事前解決に役立てました。
活気に満ちたエコシステムであるワンノースは、仕事、生活、遊びのシームレスな統合を象徴し、シンガポールのナレッジエコノミーの活性化を推進しています。

「フュージョノポリス」
- 発注者
- JTC Corporation
- 規模
- 地下6階、地上24階
延床面積120,000m2 - 竣工
- 2008年3月
- 認証
- グリーンマーク「ゴールドプラス」
メガオフィスパーク「メープルツリービジネスシティ(MBC) I・II」
アレクサンドラ地区に位置する「メープルツリービジネスシティ(MBC)」は、シンガポールの大型総合開発のひとつです。当社は本開発の施工に携わり、2010年に「MBC I」、2016年に「MBC II」を完成させました。これらは、約306,603m2のグレードAオフィス・ビジネスパークで、オフィスタワー1棟とビジネスパーク7ブロックで構成されています。
労働力の多くを外国人ワーカーに依存しているシンガポールにとって、建設産業の生産性向上は重要な課題です。建築建設省(BCA)はBIM(Building Information Modeling)に関して、世界最先端の取り組みを行っています。
当社も「MBC I」「MBC II」の施工においては、BIM を積極的に導入。「MBC I」では、基準階の施工にあたり、 3 次元に時間軸を加えた高密度4D BIM モデルを構築し、カメラによる定点観測で実際の施工状況と照らし合わせて管理を行いました。
「MBC II」では、意匠・構造・設備を連動させた「フル BIM」を導入。BIM モデルと3D プリンターにより施工手順を十分に検証した後、施工図を製作し、実際に施工するというワークフローを徹底しました。現場内には工場を設け、階段や鉄筋のプレハブ化も実現。 2015 年、BCA の BIM アワードの最優秀「プラチナ賞」を受賞しました。


「メープルツリービジネスシティ(MBC)I・II」
- 発注者
- Mapletree Investments Pte Ltd
○MBC I
- 規模
- 地上階駐車場2層、オフィスタワー 1棟
ビジネスパークブロック 3棟
延床面積 181,719m2 - 竣工
- 2010年3月
- 認証
- グリーンマーク「プラチナ」
○MBC II
- 規模
- 地上階駐車場2層
ビジネスパークブロック 4棟
延床面積 124,884m2 - 竣工
- 2016年4月
- 認証
- グリーンマーク「プラチナ」
LEED CS「ゴールド」
これからもシンガポールとともに
シンガポールに進出して約半世紀。当社は、超高層、住宅、商業ビル、空港、地下鉄、プラント、工場、病院、内装工事等、多様なプロジェクトに取り組んできました。2002年からは、建築建設庁(BCA)アカデミーの講師、プレキャストアドバイザリー委員を務め、関連省庁からの求めに応じ、事業に対するアドバイスも行っています。
超大型かつ複雑なプロジェクトが、絶え間なく発表されるシンガポール。世界中のコントラクターがしのぎを削るこの地は、当社海外事業にとって、時代の最先端プロジェクトに挑戦できる「成長の場」にもなっています。
これからも当社は、シンガポールとともに進化を続けていきます。


記載している情報は、2025年1月17日現在のものです。
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