第47回 シミズが手掛けた歴史的建造物
横浜市開港記念会館

「ジャックの塔」の愛称で親しまれる横浜のシンボル、横浜市開港記念会館。関東大震災で屋根と内部が焼失しましたが、後の復元で創建時の姿を取り戻し、国の重要文化財に指定されました。

市民の寄付で建設された公会堂

横浜市開港記念会館は、横浜港開港50年を記念する公会堂として、市民や貿易商人からの寄付で建設されました。1913(大正2)年の公開コンペで、東京市技師の福田重義(※1)の案が一等に決定。かつて建設地にあった町会所の時計台のイメージを受け継ぐもので、この案を基に横浜市技師の山田七五郎(※2)らが実施設計を行い、当社が施工。1917(大正6)年に竣工しました。

外観は、赤れんがに白()(こう)岩の縞模様が映える繊細かつ重厚なデザイン。道路に面した三隅に背の高い時計塔と八角ドーム、角ドームがあり、屋根には尖塔やドーマー窓(※3)の意匠を凝らしています。メインの講堂は1200人収容で、さまざまな公演や市民の発表会などが行われました。

しかし、竣工からわずか6年後、関東大震災により屋根と内部を焼失。その後の復旧工事(他社施工)では、財政事情のためドームから陸屋根に変更、一部を除き内装が一新されました。

関東大震災後の様子。屋根が焼け落ち、ドームの鉄骨のみ残った

関東大震災後の様子。屋根が焼け落ち、ドームの鉄骨のみ残った

  • 1 福田重義
    東京市技師や建築課長などを歴任。復興事業局長も務め、震災復興に従事した
  • 2 山田七五郎
    長崎県技師を務めた後、横浜に移り初代建築課長を務める
  • 3 ドーマー窓
    屋根面から突き出した小屋根付きの窓

創建時の姿によみがえる

戦後、GHQの接収を経て公会堂利用を再開した本会館が、創建時の姿を取り戻したのは1989(平成元)年のこと。市政100周年・開港130周年を記念してドーム復元工事が行われました。新築当時と震災復旧後の図面とともに復元の参考となったのが、新築当時に当社横浜支店が発行した「開港記念横浜会館図譜」と、当社に残る竣工写真です。これらの資料から、創建時のドーム形状や屋根飾りをシミュレーションし、設計図が作成されました。

ドームが復元され、創建時の姿を取り戻した

ドームが復元され、創建時の姿を取り戻した

ドームの復元では鉄骨の骨組みに木の下地を組み、その上に(ろく)(しょう)加工した銅板と貴重な国産天然スレートがふかれました。うろこ状のスレートを四角いスレートで縁取った美しい仕上げとなっています。内部の階段室やホールにはステンドグラスが彩りを添えています。

新築以来100年以上にわたって当社が携わってきたジャックの塔。これからも横浜の歴史を刻んでいきます。

ペリーが乗る船、ポーハタン号が描かれた階段室のステンドグラス

ペリーが乗る船、ポーハタン号が描かれた階段室のステンドグラス

建物概要

所在地 :
横浜市中区本町1-6
構 造 :
SRC造、れんが造 B1-2F-PH4
延床面積 :
4,461m2
国指定重要文化財、近代化産業遺産