既存超高層建物の地震被害を短時間で予測

~関東圏の自社施工を中心に約300棟について被害予測~

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2015.02.05

清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、既存超高層建物の地震被害を短時間で予測できる地震被害予測システムを開発・実用化、関東圏の当社施工物件を中心に約300棟の超高層建物に適用し地震被害を予測しました。

首都直下地震(東京湾北部地震)、南海トラフ巨大地震、大正型関東地震の3波を入力したシミュレーションの結果、1999年以前の竣工物件については、2000年以後の竣工物件より内外装や設備機器などに被害が発生する可能性が高いことが明らかになりました。今後、所有者からの要請に応じて総合防災診断を実施し、耐震改修工事の受注拡大を図る考えです。診断費用は20~30階の超高層建物(延床面積約3万m2)で300~400万円、期間は1~2カ月程度です。

超高層建物は、首都圏だけでも約1500棟あります。その過半を占める1999年以前に竣工した建物については、揺れが大きい直下地震や長周期地震動に対する設計が必ずしも十分に行われていないため、今後発生が懸念される大地震により被害が発生する可能性があります。一方で、耐震化検討を再度行う既存超高層建物は少数に留まっています。理由は、構造解析をともなう耐震化検討には高額な費用と長期間を要すること、超高層建物は地震に強く損傷しないというイメージが強いことなどです。

そこで当社は、既存超高層建物向けに、地震動や建物に関する公開情報などを用いて、当該地で想定される地震動に対して地震被害を短時間で予測できる地震被害予測システムを開発・実用化しました。このシステムは、建物の所在地で想定される地震動をピンポイントで予測する入力地震動評価システム、簡易振動モデルを作成する構造解析モデル設定システムから構成されます。

入力地震動評価システムの特長は、関東地域の任意の場所についてピンポイントで地震動を予測できることです。中央防災会議や当社保有の地盤データベースをもとに関東一円の地盤を解析用にモデル化しており、評価する土地の緯度・経度を入力するだけで地震動を求めることができます。一方の構造解析モデル設定システムの特長は、建物の構造特性を反映したモデルを容易に構築できることです。日本建築センター発行の「ビルディングレター」で公開されている建物の性能評価シートの基本データ、例えば規模、構造、固有周期等を入力するとモデルができあがります。地震動評価と被害予測に要する時間はわずか10分程度です。

建物の被害予測では、まず、ピンポイント予測した地震動を構造解析モデルに入力し、地震動に対応したモデルの経時変化を求める時刻歴応答解析を行います。この解析により、各階に生じる最大層間変形角、加速度、速度が明らかになるため、その応答値をもとに、各階における内外装や設備、躯体の損傷度、建物全体の損失比(再調達価格に対する復旧費用比率)を求め、4段階評価します。

以上

≪参 考≫

現地調査と防災診断は、すでに100棟以上の建物への適用実績がある総合防災診断システムの超高層バージョンで行います。大地震発生時に当該地点の地震観測記録が使える場合には、内外装、躯体、設備の損傷度と被災している可能性の高い階を推定することが可能であり、効果的な被害調査や初期対応が可能になります。また、南海トラフ地震の被害想定域に存する当社施工の16,000棟の中低層建物についても被害予測を実施済みであり、いつでも現地調査、総合防災診断に応じることができます。

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