屋内版GPS「IMES」を先取り、建物内アクセシビリティを向上へ

~非常時の障がい者誘導や巨大施設内のガイドで威力を発揮~

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2014.10.23

清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、GPS衛星からの信号が届かない建物内のアクセシビリティ向上に向け、屋内版GPS「IMES(Indoor MEssaging System)」の活用により屋内での歩行者ナビゲーションに必要な基盤技術を構築、技術研究所本館と多目的実験棟において同技術の検証実験に着手しました。両棟は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が所管するIMES送信機の常設設置登録の第一号物件となりました。

スマートフォンなどによるGPS信号の受信処理技術の進歩により、屋外での歩行者ナビゲーションシステムは普及しています。一方、屋内では衛星からの信号を受信できないこと、屋内の「地図」が整備されていないことから、屋内では同システムの普及は遅れています。そこで当社は、東京オリンピック・パラリンピックの開催決定を踏まえ、都市空間のアクセシビリティを向上させる先導技術開発プロジェクトとして、屋外・屋内に亘りシームレスに歩行者をナビゲーションできるシステム開発に着手しました。

屋内での歩行者ナビゲーションの基盤技術は、設置位置の緯度・経度・階数情報を発信するIMES送信機、GPS対応の地図に相当する屋内地図を作成する空間データベース、屋内位置情報を利用したサービスを提供する基盤となるソフトウェアから構成されます。

IMES送信機は、各フロアのエレベータホールや動線交差部など多くの建物利用者が通過する場所の天井面に設置します。IMES送信機が発信する屋内位置情報を利用者が所有するスマートフォンなどの端末で受信することで、端末画面に表示される屋内地図上で現在位置を確認できる仕組みになっています。

空間データベースは、CADやBIMで作成した建物の平面図データに廊下や階段、段差、スロープ、手すり、事務室、トイレなどの空間機能を認識できる情報や図面の平面座標と経度・緯度情報の互換機能、移動経路の検出に必要な空間同士の関連付け機能などを付加したものです。こうした情報や機能をベースに作成した屋内地図を各端末に提供します。当社はシームレスなナビゲーション実現のために、国土交通省が整備した歩行空間ネットワークデータの作成仕様に準拠した屋内地図作成ルールを制定しています。

基盤となるソフトウェアは、利用者の端末が受信する屋内位置情報と空間データベースを連携させ、様々なサービスを提供する役割を果たします。サービスメニューを充実させることで、例えばショッピングモールのような巨大施設において、来場者を目的空間に誘導できることはもちろん、車いすの利用者や歩行困難者には段差や階段を介さずに移動できる経路を提示できます。非常時には、利用者それぞれの位置や状況に応じた避難経路を提示することも可能です。今回の実証実験を通じて、こうしたナビゲーションを確実に行うことができるアルゴリズムを確立します。

なお、現時点でIMES送信機の発信電波を受信できるスマートフォンはごく一部の機種に限られるため、屋内での歩行者ナビゲーションシステムの普及にはしばらくの時間を要しますが、その間、当社は実証実験を通じてシステム機能の充実化を図ります。

以上

≪参 考≫

屋内での歩行者ナビゲーションのイメージ
IMES
JAXAが考案した屋内測位技術の一つ。GPS衛星と同じ電波形式を用いた屋内GPS送信機で送信機の位置情報を発信する。この装置と位置情報を受信できる端末が普及することで、屋内外でのシームレスなナビゲーションが可能になる。
歩行空間ネットワークデータ(国土交通省整備)
段差や幅員、スロープなどのバリア情報を含んだ歩行経路の空間配置及び歩行経路の状況を表すデータ。ナビゲーションの機能としてバリアフリールート情報の提供などが可能。歩行空間ネットワークデータを整備し、広く一般に公開することで、本データを活用したバリアフリーマップの作成やバリアフリー経路案内のようなICTを活用した歩行者移動支援サービスが普及し、高齢者、障がい者等の移動に制約を受ける人の利便性が向上するものと期待されている。

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