無菌のエアカーテンが診療室内の空気感染リスクを低減

~パンデミック対応の「シミズ・ファンフィルターユニット」~

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2014.06.02

清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、診療室内における空気感染リスクの低減を目的に、天井面の給気口から吹き出す無菌状態の空気の下向流(下向きの気流)により、病原体が付着した微粒子や飛沫核を流下させるパンデミック対応のエアカーテンシステム「シミズ・ファンフィルターユニット」を業務用空調機器メーカーの新晃工業(株)と共同開発しました。新築・改修を問わず適用可能であり、新晃工業(株)が製造し、当社から新築の場合1ユニット60万円(税・施工費別)で提供します。

これまでにも、診療室向けに様々な対策設備が商品化されています。例えば、医師と患者を隔離する簡易ブースやフードマスク、医師の後方から患者に向けて除菌した空気を吹き付ける空調などが代表的な事例です。ただ、ブースやフードマスクは医師と患者に閉塞感などの不要なストレスを与え、後者はドラフト感や空調音による不快感を与えるとともに冷暖房用の空調との気流の干渉により対策効果に差異を生じる可能性がありました。

こうした課題を解決したのがシミズ・ファンフィルターユニット(S・FFU)です。ユニットは、吸込部と吹出部から構成されます。吸込部にはウイルス・細菌などの病原体が付着した微粒子や飛沫核を含む空気の吸込口とそれらを除去・無菌化するヘパフィルター、ユニットを介して室内空気を循環させるファンを、吹出部には無菌の空気を室内に供給する給気口2本を組み込んでいます。天井内に確実に納まるサイズが求められるため、ユニットのサイズはW900×L1,200×H600mmとなります。

医師の頭上に配置する吹出部の両端に設けた2本の給気口は、それぞれ風向調節機能付きで、サイズは概ね820×110mm。この形式は、給気口の形状、大きさ、設置位置等を変えながら、天井面からの下向流により医師の周囲に効果的・経済的にエアカーテンを形成できる組み合わせを検討し、導き出したものです。エアカーテンの風速は0.35m/秒で、人が不快に感じないレベルの風速ですが、飛沫核や微粒子の粒径が5μm以下であることから、確実にエアカーテン内での浮遊を防止でき、医師周りに清浄な空間を提供できます。こうした微粒子の浮遊防止効果は、クリーンルーム設計の経験値として、専門家の間では広く認識されているものです。

S・FFUの効果については、診療室のモックアップ実験室(4m×3.7m、天井高2.6m)で実証しています。スモークを用いた可視化実験により、例えば医師の周囲に清浄な空気を提供できること、さらには患者の呼気がエアカーテンで遮られ医師の方に流れて行かないことを確認。また、懸念された冷暖房用の空調の影響についても、冷房時・暖房時に関係なく、S・FFUと空調ユニットの風量と設置間隔を調整することで、エアカーテンが確実に形成されることを確認しています。

新型インフルエンザ等のパンデミックが懸念されている中、当社はS・FFUをはじめとする各種感染対策技術を提案することで、医療関連施設の新築・改修工事の受注拡大を目指します。

以上

≪参 考≫

1.新晃工業(株)の会社概要

  • 所在地大阪府大阪市北区南森町1丁目4番5号
  • 社長武田昇三
  • 資本金5,822百万円(上場)
  • 設立昭和25年6月16日
  • 業 容空調機器の製作、販売

2.スモークを使用した患者呼気域の気流可視化実験の写真

患者の呼気を模擬したスモークがエアカーテンにより遮られ、かつ下方に吹き下ろされることにより、医師の周囲に患者の呼気が及んでいない様子が分かる。

3.シミズ・ファンフィルターユニット(S・FFU)の概念図(断面(上)と平面)

4.S・FFUを採用した診療室内の空気の流れ

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