未来へつなぐプロジェクト

44.6kmのトンネルが都市を潤す

人々が生きていく上で、決して欠かすことのできない水。
今、社会・経済の発展を目指して激しく成長を続ける新興国では、水をはじめとしたインフラの整備が急がれている。
マレーシアにおいても、首都クアラルンプールでは、今後、さらなる人口の増大と工業施設の建設が計画されているが、その水需要に対して、水不足が予想されている。
そこで、高さ1,200mの山の向こう、45kmも離れた土地から、導水トンネルで水を引いてくることが計画された。
発展著しい都市に、豊かな水を。そこから、マレーシアの人たちの笑顔の生活が始まる。
だからこそ、清水建設は、全長44.6km、最大土被り1,200mという困難を極める導水トンネルの施工に挑戦したのである。


挑むのは地球。先が見えないからこそ、スタートダッシュを。

クアラルンプールに近いパハン州からセランゴール州へ、44.6kmという東南アジア最長のトンネルを掘削し、日量189万m3の生活・工業用水を導く。それが、パハン・セランゴール導水トンネルのプロジェクトだ。困難を極めるこの仕事に取り組むにあたっては、営業や技術支援といった内勤部門と現場サイドとの間で、「本当にうまくいくのか」「利益は確保できるのか」と激しい議論が交わされた。日本のゼネコン各社は、中東をはじめ、建設ラッシュに湧く海外での巨大プロジェクトに次々と乗り出していたが、相手国との商慣習の違いや国際政情の変化、為替の大きな変動などによって、代金未回収などの手痛い現実に直面することも多かった。建設所長である河田自身も1990年代に、インドネシアの水力発電用地下トンネル工事で、通貨下落や工期遅延など、苦い経験をしていた。しかし、このプロジェクトへは強い想いがあった。「現地の人々に安定した生活・工業用水を提供する」、「清水建設の高い技術力を世界に証明したい」。

プロジェクトの計画段階では、実に100項目以上のリスク要因を列挙し、綿密な施工計画を練り上げた。それこそが成功につながると考えたのだ。そして、真っ先に取り組んだのが、スタートダッシュだった。「契約上、1日工事完了が遅延すると、膨大な損害金を支払わなければならない。トンネル工事は地中の掘削工事に入ってしまったら、工期短縮を図るのは非常に困難。なぜなら、軟弱な岩盤や大量の湧水などに悩まされることがよくあるから。だからこそ、掘削開始前の明かり工事(トンネル外の工事)段階や、掘削機(TBM:トンネル・ボーリング・マシン、写真上)の設置段階を前倒しで進め、その後の工期に余裕を持たせられるかが勝負だ」と判断したからだ。

計画通り、機材を現場へ運ぶための道路工事を数か月早く終えた。またTBMの組み立ても、アメリカのTBMメーカーに協力を要請。通常のトンネル内での組み立てではなく、仮設ヤードで組み立てて、本坑内に移動する方法を採用し、工期を前倒しできた。こうした工夫を積み重ねることで、TBMでの掘削工事は当初の予定よりも5か月早く開始された。

導水トンネル44.6kmのうち、3台のTBMで計34.6kmを掘削し、残りをNATM(ダイナマイトなどによって 爆破、掘削した部分をコンクリートで固め、特殊なボルトを岩盤深くまで打ち込んで岩盤とコンクリートを固定する工法)などによって掘削

多国籍のチームをまとめ上げ、目標に果敢に挑み続けた。

このプロジェクトには、インドネシアやバングラディシュ、マレーシアなど15か国から1,000人以上の人々が参加した。当然、文化や言葉、習慣も異なる。この多国籍チームをマネジメントし、皆が同じベクトルで作業するよう導いていくこと。それも当社のプロジェクトメンバーにとって大切な仕事だった。

現場では、月進1,000mという目標を掲げた。その達成に向けて、河田所長がインドネシア在任時期に信頼関係を築いてきたインドネシア人スタッフや、JVを組むTBMのエキスパートたちが知恵と力を注いだ。また、TBMのカッターをより鋭利なものに交換して食い込み量を倍増させるなど、機械の改良や施工方法の工夫も続けた。

実際の掘削では、突発的な湧水に見舞われたり、巨大な空洞に突き当たったりと、度重なるアクシデントが行く手を阻んだ。チームの誰もが地球を相手にする困難さを改めて実感した。しかし、誰も諦めなかった。マレーシアの発展に寄与するという使命感。当社における海外工事の未来を左右するプロジェクトであるという責任感を、チーム全体で共有していたからだ。

推定高さ50m以上の空洞が存在し、地山崩壊があったLepoh(レポ)断層は、最難関工事の一つだった。その掘削では、地下からの熱水で性質が変化した粘土や土砂が、TBMのカッターの先端を塞いでしまい、それを人力でかき出すという事態も発生した。そのときも、何としてでもTBMを前に進めると、皆で心を合わせて取り組んだ。断層を突破 したときは、トンネル貫通に匹敵する充実感がチームを包み込んだ。

熱帯雨林の高温多湿な厳しい作業環境。しかし、その先にはマレーシアで生活するの人々の笑顔が待っている、とチームの誰もが信じていた。文化や言葉、習慣を超えて、全員で難題に挑んだ。その充実感が、プロジェクトメンバーの大きな支えとなった。

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