横浜には数多くの歴史的建造物が残されています。その中でも印象的な建物の一つに、本町通りとみなとみらい大通りが合流するY字路に建つ「旧第一銀行横浜支店」があります。
第一銀行横浜支店は、1873(明治6)年、渋沢栄一翁により創設された第一国立銀行の支店として開設されました。建物を手掛けたのは二代清水喜助です。
その後、1889 (明治22)年、1911(明治44)年にも、当社が設計施工で建て替えを行いました。
現在の建物の原形は、関東大震災で被災後、1929 (昭和4)年に当社が復興したものです。2003(平成15)年、再開発事業によりY字路の合流地点が付け替えられたため、先端の半円形部分を曳家、その他を新たに復元し、横浜アイランドタワーの低層部に組み込まれました。
関東大震災からの復興に際し、設計を担当したのは当社の小笹徳蔵(※1)と、当社から第一銀行に転じた西村好時(※2)でした。
復興事業により本町通りの拡幅が行われ、敷地はより鋭角な三角形状となります。そこで小笹は、Y字路の中州の先端を正面玄関とした4階建ての建物を構想。玄関先には2階まで伸びた円柱が並ぶ半円形の車寄せを設けます。
また、タイルやテラコッタの装飾帯、3連アーチ窓、ねじれ柱といった意匠を散りばめ、当時欧米で流行していたスパニッシュ様式を提案します。
小笹徳蔵による設計案(断面図)
小笹徳蔵による設計案(4階立面図)
しかし、第一銀行は古典主義様式を要望したため、西村が小笹の構想を踏襲しつつ、設計を練り直します。象徴的なのが正面玄関の変更でした。1階を車寄せから玄関に、2、3階をバルコニーとし、建物全体を3階建てにして階高を統一することで、古典主義様式が模範としたギリシア神殿のようなファサードを生み出しました。
このように誕生した正面玄関を持つ本建物は、横浜の景観を飾るランドマークとして、今も多くの人々に愛されています。