2026.10.26
清水建設(株)<社長 新村達也>はこのほど、近年の地震被害から明らかになってきた免震建物のリスクの回避に向け、あらゆる免震建物に適用できる汎用性の高い対策技術「S-TOPダンパー」を開発・実用化しました。最大の特長は、新築・既存問わず免震性能を付加的に高めるシンプルな装置を設置するだけで、設計で想定したレベルを超える大地震に遭遇しても、建物が免震層側壁に衝突し損傷するといった致命的なリスクを回避できることです。今後、新築はもとより、5千棟超の既存免震建物を対象に実装提案を進め、まさに安全・安心な免震ストックの形成に寄与していく考えです。
免震建物には免震層側壁との衝突を防ぐ免震クリアランスと呼ばれる隙間を設けています。しかし、10年前の熊本地震では積層ゴムが大きく変形して衝突寸前に至った免震建物、そして今回の熊本地震では積層ゴムが損傷した建物の存在がそれぞれ確認されています。このため、“衝突”という致命的なリスクへの対応がもはや無視できない喫緊の課題になっています。
一方、現時点では抜本的な衝突防止策は不在です。クリアランスの拡大やダンパーの増設が卑近な対策ですが、前者は既存建物に適用できず、新築建物でも経済性や敷地条件の面で限界があり、後者は発生頻度の高い中小地震への免震効果を阻害、しかも建築確認の再取得を要し早期着工が困難です。そこで当社は、経済性と免震性能を阻害すること無く、弱点のみを早く安くカバーするS-TOPダンパーを開発しました。
本装置のポイントは、長さ5mほどの棒鋼製のダンパーで免震層の上・下階の躯体に取り付けた鋼製支承を連結するだけの極めてシンプルな機構とし、かつ棒鋼の片端をトラニオン機構と呼ぶ管状部材に差し込みルーズジョイントすることです。棒鋼には免震クリアランス相当の余長(ギャップ)部を設けており、中小地震時には余長部が管状部材の中を摺動するだけですが、建物の揺れ幅がクリアランスに迫ると初めて棒鋼に引張力や圧縮力が作用し、揺れを吸収する仕組みになっています。装置は2タイプあり、引張力と圧縮力に抵抗する引張・圧縮タイプと引張力にのみ抵抗する引張タイプで、設置可能台数やターゲットにする地震動の特性に合わせて使い分けます。
引張・圧縮タイプの棒鋼は普通鋼(SS400材等)製で、長さ約5.2m、直径60mm、外径(鞘管)190mm、引張タイプは高張力鋼(普通鋼の約2.5倍の強度)製で、長さ約5m、直径42mmです。施工中の第一三共(株)品川研究開発センターの研究棟に引張・圧縮タイプをすでに8体設置済みで、建築基準法での想定レベルを超える巨大地震発生時でも同研究棟は継続使用が可能です。また、別のお客様の施設(計4件)でも実装が確定しています。
以上
≪参 考≫
S-TOPダンパーを実装した研究棟
| 発 注 者 | 第一三共(株) |
|---|---|
| 建 設 地 | 品川区広町1-2-58 |
| 規 模 | 地上8階、塔屋2階、延床面積63,398m2 |
| 工 期 | 2024年11月1日~2027年12月31日 |
| 設計施工 | 清水建設(株) |
実証試験
開発にあたっては、一般財団法人免震研究推進機構が保有する国内初の実大免震試験機「E-Isolation」を用い、免震用S-TOPダンパーの実大装置に大振幅地震動の条件に近い最大振幅±710mm・最大速度80cm/sで載荷。この結果、大地震以下の領域では棒鋼に力が作用しないこと、大振幅地震動の領域では最大反力1,600kNを発揮することを確認しました。これは一般的な免震用オイルダンパーの約2倍の反力に相当します。
免震用S-TOPダンパーで対策した免震建物と性能のイメージ(図参照)
免震用S-TOPダンパー(引張・圧縮タイプ)の作動原理(図参照)
免震用S-TOPダンパー(引張タイプ)の概要(図参照)
材質:高張力鋼(普通鋼の約2.5倍の強度)、長さ:約5m、直径:42mm
免震用S-TOPダンパー(引張・圧縮タイプ)の概要(図参照)
材質:普通鋼(SS400材等)、長さ:約5.2m、外径:190mm、芯材直径:60mm
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