2025.12.09
清水建設(株)<社長 新村達也>はこのほど、ダム工事等に用いる夜間工事照明が建設地周辺の生態系に与える影響を定量的に評価する「夜間工事照明影響評価システム」を改良し、照明の色温度と気温条件を反映したシミュレーション機能を実装しました。これにより、季節や地域特性を評価に反映できるようになり、より費用対効果の高い照明計画の立案が可能となりました。
近年、ネイチャーポジティブ社会の実現に向けた気運が高まる中、自然豊かな山間部でのダムやトンネル等の土木工事では、生態系保全の重要性が一層高まっています。特に、建設地付近にクマタカ等の希少な猛禽類が生息する場合、環境省が策定した「猛禽類保護の進め方」に則り、多角的な環境対策を施す必要があります。この対策の一環として行われるのが、夜間工事照明による昆虫類の誘引防止対策です。照明に誘引され本来の生息地を離れた昆虫は、生存が難しくなり、その結果当該種の個体数が減少すると、これらを捕食する爬虫類や鳥類、ほ乳類等、食物連鎖上位の生物にも影響が及ぶ可能性があります。
本システムは、照明による昆虫類の誘引・死滅によって失われる餌資源のカロリー量から、食物連鎖の中位・上位生物に与える影響度を定量的に算出するツールです。従来システムは、水銀灯・ナトリウム灯・LED灯といった照明の種類や光量ごとに評価を行っていましたが、水銀灯の生産が終了しLED灯が普及したことで照明の色温度ごとの検証が進み、白色LEDよりも暖色LEDの方が昆虫類の誘引率が低いことが明らかとなりました。一方、暖色LEDは白色LEDと比して消費電力が大きく、コストも多くかかることに加え視認性が低いため、単純な置き換えが難しいという課題がありました。そこで当社は、6現場において計33万匹の昆虫を捕獲・分類・カウントする誘虫試験を実施し、LED灯の色温度別に評価できる新システムを構築しました。
本システムでは、現場周辺における水田・森林・草地等の面積割合、特定期間における平均気温、照明の種類や台数等を入力することで、夜間照明に誘引される昆虫類の種別・数量、失われる猛禽類の餌資源量、照明コストを即時に算出できます。照明の色調や気温条件を変更すれば、餌資源量やコストも更新されるため、環境対策効果と経済性のバランスを考慮した最適な照明計画立案につなげることができます。当社は今後、本システムをダム工事等の技術提案や照明計画コンサルティング業務に積極的に活用していく予定です。
≪参 考≫
■照明計画による影響量・設置費用・消費電力の比較
| A案 | B案 | C案 | |
|---|---|---|---|
| イメージ図 | ![]() |
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| 照明の色調 | すべて白色LED | すべて暖色LED | 作業区画は白色LED その他は暖色LED |
| 影響量 (指標) |
0.282 | 0.159 | 0.171 |
| 照明機材費 (十万円) |
約120 | 約190 | 約160 |
| 消費電力 (kWh) |
約80 | 約120 | 約100 |
以上
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