堤体に貫通孔を設け野村ダムの洪水調整能力を増強

~山岳トンネル用自由断面掘削機で堤体を削孔~

  • 土木

2025.12.07

清水建設(株)<社長 新村達也>はこのほど、愛媛県の一級河川肱川ひじかわの最上流部に位置する野村ダム(西予市野村町)の洪水調整能力の増強に向け、山岳トンネル工事用の自由断面掘削機によりダム堤体を削孔し、幅・高さ5.4m~9.0m、延長31.5mの貫通孔を設けました。この貫通孔は放流設備を増設するためのもので、完成すると事前放流水位EL160.2mに貯水位を低下させた状況においても、洪水調節開始流量500m3/sの放流が可能となり、洪水調節可能容量を最大限確保した状態で洪水調節が可能となります。

野村ダムは1982年に完成した重力式コンクリートダムで、規模は堤高60m、堤頂長300m、堤体積254,000m3です。2018年7月の西日本豪雨に際し肱川流域で洪水被害が発生したことから、国土交通省四国地方整備局は既設ダムに放流設備を1基増設する改良計画を策定。当社は23年2月、ECI(Early Contractor Involvement)方式で発注された野村ダム施設改良工事を受注、施工計画の策定段階から参画しています。工期は25年12月までです。

堤体の削孔に当っては、自由断面掘削機で一次削孔した後、スパイキハンマー(空圧はつり機)で二次の仕上削孔を行うとともに、山岳トンネル用の測量機器を用いて削孔精度を管理しました。この結果、+50mm以内という厳しい許容値を満足することができました。

一方、削孔作業は既存ダムを運用しながら行うため、扉体ブロックと呼ばれる仮締め切り設備で堤体の貫通部を事前に覆い、貫通時に孔内へのダム水の流入を回避します。イメージ的には巨大なU字溝で貫通孔を塞いでいるように映ります。扉体ブロックの平面寸法(内法)は幅10m、奥行3.7(底部)~6.6m(上端部)、高さ38mで、浮体式構造を採用しています。

施工方法は、初めに工場製作した扉体ブロックの構成部材を3体ずつ現場に搬入し、溶接・ユニット化します。その後、陸上の大型クレーンで14体のユニットをダム湖内の台船上に吊り込みます。続いて別の台船上のクレーンで底部ユニットから順に水中に吊り込み、作業員が上下段のユニットをボルト固定しては部材の浮体気密室内部へ水や空気を注入、浮力及びバランスを調整して沈降させます。こうした作業を繰り返し水中で高さ38mの扉体ブロックを組み立てます。最終的には陸上の大型クレーンで扉体ブロックを堤体上流側の所定位置に吊り込み、ボルト締結した後、内部の水を抜くことで水圧をかけ堤体と一体化させます。従来の仮締め切り方式に比べ潜水作業が大幅に削減されるので、品質向上と工期短縮に寄与します。

気候変動により局地的大雨や集中豪雨が多発する中、全国各地のダムで洪水調整能力の増強工事の計画が見込まれることから、当社は今回の工事で得た知見をもとに技術提案を行い、工事受注に結びつけていく考えです。

≪参 考≫

現場概要

事 業 名 令和4-7年度野村ダム施設改良工事
工事場所 愛媛県西予市野村町野村地先
発 注 者 国土交通省 四国地方整備局
施 工 者 清水建設株式会社
工 期 2023年2月10日~2028年3月末(全体工事)
2023年2月10日~2025年12月26日(1期工事=当社施工分)
ダム諸元 堤高 / 堤頂長 / 提体積:60m / 300m / 25.4万m3
利用目的:洪水調節、かんがい用水、水道用水

自由断面掘削機による削孔状況

削孔着手の写真
(削孔着手)
削孔完了の写真
(削孔完了)

扉体ブロックの設置状況

扉体ブロックの設置状況の写真1
扉体ブロックの設置状況の写真2
扉体ブロックの設置状況の写真3

以上

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