2025.01.21
清水建設(株)<社長 井上和幸>は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運営する宇宙戦略基金事業において、技術開発テーマ「宇宙輸送機の革新的な軽量・高性能化及びコスト低減技術」のうち「ロケット用大型構造部品を対象とした金属3D 積層に係る基盤技術開発」の実施機関に選定され、同機構とこのほど委託契約を締結しました。今後、技術開発課題として当社が提案した「金属3D積層によるロケット用大型液体推進薬タンクの製造技術開発」に取り組み、金属3D積層造形技術の一種であるWAAM(Wire-Arc Additive Manufacturing)を用いて直径2.5m規模の大型液体推進薬タンクを一体造形する技術の構築を目指します。
宇宙戦略基金は、民間企業や大学による宇宙分野の技術開発を支援するための基金として、政府がJAXAに設置したものです。同基金では、「輸送」「衛星等」「探査等」の3つの分野において、「市場の拡大」「社会課題解決」「フロンティア開拓」の3つの出口を見据えた技術開発テーマを設定し、公募により採択した技術開発課題の実施機関に対して複数年度(最大10年)にわたる資金支援を行います。
当社の提案課題が採択された「輸送」分野においては、ロケット打上げ需要が拡大し、国際的な宇宙開発競争が激化する中、低コスト構造の宇宙輸送システムを実現するため、ロケット等の宇宙輸送機の機体やエンジン・タンク等の軽量化・高性能化、コスト低減に資するブレイクスルー技術の獲得が求められています。機体の大型部品等の製造においては、金属3D 積層技術を導入することで、製造コストの低減と製造期間の短縮が期待できることから、「ロケット用大型構造部品を対象とした金属3D 積層に係る基盤技術」が開発テーマの一つに設定されています。
当社は、従前からWAAMによる積層造形の技術開発に取り組み、アルミ合金製の建築用外装材への適用と並行して、ロケット用燃料タンクへの適用に向けた検討を進めてきました。今回の提案課題の技術開発においては、これまで蓄積したWAAM技術をベースに、大型構造物への適用に向けた課題となる大物造形プロセスの確立、造形品質の向上に取り組みます。
大物造形プロセスについては、新たな造形設備の開発・導入、インプロセス制御ソフト・インプロセス計測装置の開発により、ロケット用燃料タンクの造形に関する課題を洗い出し、その解決策を検討します。造形品質については、インプロセス計測データの活用、積層厚みの安定化、ロボット空間精度の向上により、内部品質・形状品質の安定化を図ります。これらの成果を基に、2年後を目途に直径2.5mのドーム造形物の試作を完了させ、技術開発実施期間終了までに直径2.5mのタンク構造物の一体造形技術を構築し、供試体の常温耐圧試験まで行う計画です。並行して、建築用外装材等への適用も見据えた事業化検討にも取り組みます。
なお、本技術開発には、大陽日酸(株)、埼玉大学、広島大学が連携機関として参画し、技術課題の解決に4者が役割を分担して取り組みます。
以上
≪参 考≫
技術開発の実施体制

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