超高層ビルの環境配慮型解体工法を開発・実用化

~プラズマ切断をブロック解体に展開し、CO2排出削減と作業効率化を実現~

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2023.12.20

清水建設(株)<社長 井上和幸>は、東京都内で施工中の「内幸町一丁目街区南地区第一種市街地再開発事業解体工事」に、一連の解体プロセスに各種のデジタル・ロボット技術を取り入れた環境配慮型超高層解体工法「グリーン サイクル デモリッション」を適用し、環境負荷の低減と生産性の向上に成果を上げています。

「グリーン サイクル デモリッション」は、ブロック状に切断した躯体を大型クレーンで最上階から吊り降ろし、地上で破砕・分別するブロック解体工法をベースに構築したもので、解体のサイクル工程を下層階へ順に受け渡しながらシステマティックに解体を進めていきます。ブロック解体工法としての特長は、鉄骨躯体の解体に自社開発した自動プラズマ切断装置「シミズ プラズマ カッター」を活用することです。この装置をサイクル工程に組み入れた下層階での鉄骨柱・梁の先行切断作業に活用することで、CO2排出削減と作業時間短縮を実現します。

高度成長期に建造された超高層ビルが更新期を迎えつつある中、今後、これらの解体需要の顕在化が見込まれます。一方、超高層ビルの多くは都心部に立地しており、解体施工に際しては周辺環境への負荷を最小限に抑える工夫が求められます。また、気候変動対策の観点から施工時には排出するCO2の抑制も必須の課題となっています。「グリーン サイクル デモリッション」は、こうした課題を解決する環境配慮型の解体工法として構築・実用化したものです。

本工法のベースとなるブロック解体工法は、屋上に吊り上げた重機で部材を破砕・解体していく階上解体等の他工法と比べて安全性が高く、騒音・粉塵の発生量も少ないため、周辺環境に与える影響を最小化できるメリットがあります。併せて、本工法では、鉄骨躯体の切断工程に、汎用的なガス切断とCO2排出量の少ないプラズマ切断を併用することで、地球環境に対する負荷を抑制します。

鉄骨柱・梁の先行切断に使用する自動プラズマ切断装置は、切断機ユニットと制御ユニットから構成され、切断機ユニットの電極からの放電エネルギーを利用して金属部材を切断します。同装置は、高温プラズマを熱源として利用するため切断スピードが速く、ガス切断と比べて作業時間を3割程度削減できます。また、200Vの電源があれば使用できるため、ガス切断に必要なガスボンベの搬出入も不要となります。作業時には、フォークリフトを使って切断機ユニットを切断箇所にセットした後、タブレット端末から作業指示を与えるだけで自動切断がスタートします。併せて、当社独自のARシステム「Shimz AR Eye」を鉄骨切断箇所の可視化に活用。タブレットを切断箇所にかざすと、切断機ユニットの設置位置と取り付け角度を示すBIMデータがカメラ映像に重ね合わせて投影されるため、切断作業の準備を効率的に進めることができます。

近年、ガス切断工は不足傾向にあり、限られた人員を効率的に運用する工夫が求められます。鉄骨躯体の解体に際し、下層階での鉄骨柱・梁の先行切断作業に自動プラズマ切断装置を活用し、ガス切断工の作業を上層階での最終切断工程に集約させることで、ブロック解体のサイクル工程の生産効率が高まります。

「グリーン サイクル デモリッション」ではこのほか、「現地調査・施工計画における360度画像・点群データの活用」「少水量型超高圧ウォータージェットシステム(S-Jet)によるアスベスト除去」「ロボットによる床切断位置の墨出し」など、各プロセスに先進技術を適用し、生産性の向上と環境負荷の軽減を図ります。当社は本工法を超高層ビル解体工事の標準工法と位置づけ、事業者への技術提案を進めていく考えです。

以上

≪参 考≫

自動プラズマ切断装置「シミズ プラズマ カッター」

梁切断
梁切断
柱切断
柱切断

Shimz AR Eyeによる鉄骨切断箇所の可視化

Shimz AR Eyeによる鉄骨切断箇所の可視化

現地調査・施工計画における360度画像・点群データの活用

計測結果
計測結果
データ上での計測
データ上での計測

少水量型超高圧ウォータージェットシステム「S-Jet」

少水量型超高圧ウォータージェットシステム「S-Jet」
少水量型超高圧ウォータージェットシステム「S-Jet」

ロボットによる床切断位置の墨出し

ロボットによる床切断位置の墨出し

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