Pandemic Ready（パンデミック　レディ）を初適用した大規模リノベーション工事に着手

清水建設（株）＜社長 井上和幸＞はこのほど、順天堂大学＜大学院医学研究科感染制御科学 堀賢教授＞と共同開発の感染リスク評価手法（Pandemic Ready）を初適用した「第一生命日比谷ファースト（旧DNタワー21）」の大規模リノベーション工事に着手しました。この工事は、第一生命保険（株）がDNタワー21を単独所有にしたことを機に実施するもので、当社が設計・施工を受注。完成は23年度中の予定です。

DNタワー21は1993年に竣工し、築後30年近くが経過します。一般的に、現在の不動産ストックの大半を占める築30年以上のオフィスビルにおいては、一人当たりの専有面積(5～7m²)、換気風量（20m³/h/人＝建築基準法）、扉や水栓などの人手の接触部の仕様等を勘案すると、飛沫、マイクロ飛沫、接触の各感染リスクの面で多くの課題が見受けられます。

そこで、今回の大規模リノベーション工事の計画にあたっては、コンセプト「ポストコロナ時代のウェルビーイングが高まるオフィスビル」に相応しい仕様にすべく、当社はPandemic Readyを初適用して4種の感染経路（空気、エアロゾル、飛沫、接触）ごとに感染リスクを低減するハード（建築/設備）、ソフト（運用/備品）を含む総合的な対策を提案。その結果、ニューノーマル時代における新しい働き方と運用方法を織り込んだ、「Pandemic Ready改修」が実現しました。

Pandemic Ready改修の前提として、発注者の第一生命保険（株）と協議のうえ、出社率を約6割に設定。平常時でも1人当たりの専有面積を従来の8割増の9m²、運用上の換気風量を建築基準法の1.5倍相当の30m³/h以上とします。また、オフィス内での多様な働き方に対応するために机の4割を可動机とし、固定机を含めて1.8mの座席間隔を確保できる運用を行います。こうした取り組みにより、エアロゾル感染と飛沫感染のリスク低減を図ります。

さらに、接触感染リスクを低減するため、セキュリティゲートは非接触ICカード、QRコードを活用した受付システム、主要出入口やトイレの出入口には自動扉を設置するとともに、エレベータなどには抗菌・抗ウィルス釦を採用します。もちろん、各所に手指消毒液を配置します。こうした総合的な取り組みの結果、Pandemic Readyによる第一生命日比谷ファーストの総合評価（5段階評価、5点≒リスクゼロ）は接触3.17点、飛沫3.83点、エアロゾル感染3.56点、空気感染3.44点となり、感染対策として必要十分な対策が施されていると判断される3点を大きく超え、高いレベルに達しているという評価を得ています。また、各評価項目とも1点がない状態であり、これは脆弱なポイントすべてに対策が施されていることを意味します。順天堂大学の堀賢教授は、今回のPandemic Ready改修について「特定された感染対策上の脆弱性への対応として、感染リスクを低減するハード・ソフトがバランスよく盛り込まれており、費用対効果的にも優れた提案になっている」と評価しています。

当社は引き続き、建物用途や新築・改修を問わず、Pandemic Readyによる感染リスク評価を提案し、ウイズ/ポストコロナ時代に相応しい建築を実現していく考えです。