中京圏初の本格的な木質構造のマンションが近く上棟

~柱、梁、耐震壁、内外装の仕上げ材に木材を多用~

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2019.12.19

清水建設(株)<社長 井上和幸>は現在、名古屋市千種区において、中京圏初となる木造と鉄筋コンクリート(RC)造を組み合わせた本格的な木質耐火構造の中層マンションを建設中であり、1月中旬にも木質耐火柱・梁の架設を終え、木質の構造体が完成します。

自治体による「公共建築物等木材利用促進法」の運用強化などを背景に、今後、仕上げ材はもとより、構造体にも木材を用いる建築物の増加が見込まれます。このため、大手建設各社は現在、中・大規模の耐火建築の構造体への適用を想定した木質耐火部材の開発を競っています。木質耐火部材とは、木材と特殊な素材を組み合わせることで、火災時に優れた耐火性能を発揮する構造部材を意味します。

千種区に建設中の中層マンションは当社の社有社宅として計画したもので、地下1階が駐車場、地上4階が26戸の住宅となります。規模は、建築面積799m2、延床面積3,152m2、竣工は2020年5月の予定です。設計にあたっては、構造体や内・外装の仕上げ材として計220m3もの木材を採用。木の居住空間の創出に努めるとともに、中層マンションに求められる耐震性や耐火性、遮音性等を確保するため、木造とRC造の最適な組み合わせを追求しました。こうした取り組みが評価され、本計画は国土交通省から2018年度の「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択されました。

基本的な構造計画は、地下1階の柱頭部に設けた11基の免震装置上に、幅50.5m、奥行き17.0m、厚さ90㎝の人工地盤を築き、その上に4階建ての建物を載せる構成になっています。うち、建物長辺方向の外周に位置する梁56体と柱28体、間柱56体に当社と菊水化学工業が共同開発し、国土交通大臣認定を取得した木質耐火部材「スリム耐火ウッド」を初採用しています。また、各住戸内に原則2体ずつ配置する耐震壁57体は木の直交集成板(CLTパネル)製で、建物の長辺方向に作用する地震力の最大60%程度を負担するとともに、間仕切り兼仕上げ材としても機能します。構造部材のほかにも、内装仕上げ材、妻側の外壁にも木材を採用し、“木質の居住空間”を演出します。

なお、木質構造を計画するうえで最も技術的難易度が高いのは、木質耐火部材の接合方法です。当社は、木質構造の架構技術として「シミズ ハイウッド」を開発しており、今回の柱・梁の接合にはその核となる耐震性、耐火性、施工性に優れた接合部材(PCa接合部材)を用いています。

当社は、付加価値の高い建築物を提供していくための一つの手法として、中・大規模の耐火建築の発注者に対して木質構造の採用を提案していく考えです。

以上

≪参 考≫

工事概要

工事名称 茶屋ヶ坂アパート建替工事
所 在 地 名古屋市千種区赤坂町1-29-2
規  模 地下1階、地上4階
建築面積799.86m2
延床面積3,152.55m2
発注・設計・施工 清水建設(株)
工  期 2018年12月~2020年5月
外観写真
内観写真

公共建築物等木材利用促進法(公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律)

2010年10月1日に施行。我が国では、戦後に造林された人工林が資源として利用可能な時期を迎える一方、森林の手入れが十分に行われず、国土保全など森林の多面的機能の低下が懸念される事態となっている。
この法律は、こうした状況を踏まえ、木造率が低く(2008年度7.5%床面積ベース)今後の需要が期待できる公共建築物にターゲットを絞り、国が率先して木材利用に取り組むとともに、地方公共団体や民間事業者にも国の方針に即して主体的な取組を促し、住宅など一般建築物への波及効果を含め、木材全体の需要を拡大し、林業の再生を図ることを目的としている。

構造計画

RC造+木造のハイブリッド構造・免震構造 構造モデル
RC造+木造のハイブリッド構造・免震構造 構造モデル
CLT耐震壁 断面図
CLT耐震壁 断面図
住戸部分の構造モデル
住戸部分の構造モデル

シミズ ハイウッド(Shimz Hy-wood)

シミズ ハイウッドではPCa接合部材を介して、木質構造とRC造、あるいはS造といった異なる構造の柱同士や柱・梁を接合・一体化することで、様々なニーズに応じた自由な木質空間を提供する。PCa接合部材は耐震性、施工性に優れる。また、火災時に高温となるS梁から木質柱への熱伝導・延焼を抑制する。

柱・梁の構成
柱・梁の構成
CLT耐震壁の接合部
CLT耐震壁の接合部
詳細断面図
詳細断面図

スリム耐火ウッド

特徴は、耐火シートと強化石膏ボードの異種材料を組み合わせて、二重の燃え止まり層を形成すること。火災時の加熱により薄い耐火シートが発泡する断熱効果と強化石膏ボードによる吸熱・断熱効果により、燃え止まり層の耐火性能を高めつつ、その厚さを32㎜に抑えている。燃え止まり層を薄くすることにより、コストを低減するとともに、室内の有効空間や開口面積を広くできる。

スリム耐火ウッドの構成
スリム耐火ウッドの構成

サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)

この事業は、再生産可能な循環資源である木材を大量に使用する大規模な木造建築物等の先導的な整備事例について、その具体の内容を広く国民に示し、木造建築物等に係る技術の進展に資するとともに普及啓発を図ることを目的にしている。

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