隠岐の島町にバイオプラスチック原料の研究施設が完成

~木材からリグノフェノールを抽出・製造~

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2019.10.29

清水建設(株)<社長井上和幸>が、藤井基礎設計事務所、(株)神鋼環境ソリューション、神鋼商事(株)と共同で、隠岐の島町(島根県隠岐郡)で建設を進めてきた、木材からバイオプラスチックの原料となるリグノフェノールを抽出・製造する研究施設が完成しました。4社は、この研究施設を活用してリグノフェノールの経済的な製造プロセスを検証するとともに用途開発に取り組み、2021年にも商用プラントの建設に着手する計画です。

リグノフェノールは、バイオプラスチックの原料で、三重大学の舩岡名誉教授が1990年代に開発した新規化学物質です。多くのバイオ素材が食料資源を原料とするなか、非可食の木質資源、特に間伐材や端材、松枯れ材などの低品位材からも抽出できることが特徴です。将来的には、温暖化を加速する石油由来のプラスチック原料を代替するとともに、その普及により国内林業の再生、地方経済の活性化にも寄与できるものと期待されています。

用途としては自動車やOA機器などに用いられる熱可塑性プラスチック、鉄道車両や電子機器などに用いられる熱硬化性プラスチック、フェノール系接着剤、そしてプラスチック発泡材等への機能性添加剤としての使用が期待されています。これにより、プラスチックの難燃性、強度、剛性、加工性等が向上します。

当社は2015年5月、(株)藤井基礎設計事務所からリグノフェノール製造施設の実用化に向けた共同研究の申し入れを受けました。同社はいち早くリグノフェノールの有用性に着目し、すでに2013年には基礎的な製造技術を開発しています。当社はこの申し入れを受け、リグノフェノールの製造販売の事業化の可能性の検討に着手。2018年4月に4社で共同研究体制を立ち上げ、製造技術の改良や用途開発を推進。この結果、リグノフェノールには十分な市場性があると判断し、昨年10月に事業化に向けた研究施設の建設を意思決定しました。

完成した研究施設は、これまでの共同研究の成果を反映したリグノフェノールの小規模製造プラントで、生産能力は年間1t程度です。4社は協力して商用化に向けて製造プロセスの経済性を追求するとともに、リグノフェノールをサンプル出荷し、市場開拓を推進する考えです。

以上

≪参 考≫

(株)藤井基礎設計事務所

所 在 地 島根県松江市東津田町1349
資 本 金 20,000千円(平成30年12月期)
社  長 藤井 俊逸
設  立 1974年4月
事業概要 建設コンサルタント

(株)神鋼環境ソリューション

所 在 地 兵庫県神戸市中央区脇浜町一丁目4番78号
資 本 金 6,020,000千円(平成31年3月期)
社  長 粕谷 強
設  立 1954年6月
事業概要 水処理関連事業、廃棄物処理関連事業、化学・食品機械関連事業等

神鋼商事(株)

所 在 地 大阪府大阪市中央区北浜二丁目6番18号
資 本 金 5,650,280千円(平成31年3月期)
社  長 森地 高文
設  立 1946年11月
事業概要 鉄鋼、鉄鋼原料、非鉄金属、機械、情報産業、溶材各製品の売買及び輸出入

リグノフェノールについて

木材はセルロース、ヘミセルロース、リグニンの三大要素で構成されます。このうちのリグニンを、三重大学の舩岡名誉教授が開発した技術を用いて、常温下で硫酸を使用して安定化させ、セルロース、ヘミセルロースから分離して得られる物質がリグノフェノールです。リグノフェノールは溶媒によく溶け、プラスチックとの相溶性が良く、プラスチックに難燃性、強度向上などの機能を与え、部材の軽量化を実現します。

リグノフェノール

研究施設

実験棟

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