ダムコンクリートの製造・運搬・打設を完全自動化

~軌索式ケーブルクレーンによる自動運搬を実現~

  • 土木

2019.01.07

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、軌索式ケーブルクレーンを利用するダムコンクリートの打設工事を対象に、コンクリートの製造から運搬・打設に至る一連の作業を完全自動化した「ダムコンクリート自動打設システム」を開発しました。システムの特徴は、施工管理者が事前に作成した打設計画を入力するだけで、所定の打設作業を自動的かつ連続的に実施できることです。当社JVが盛岡市内で進めている簗川ダム建設(堤体工)工事に本システムを実装し、冬期の休止期間を経て今年3月下旬から再開される堤体コンクリート打設に本格適用する予定です。

ダム堤体のコンクリート打設工事はコンクリートの製造・運搬・打設の繰り返し作業であり、しかも総工費の約6割を占め、繰り返し作業を自動化すれば大幅な生産性の向上につながります。そこで当社は、一連の作業の自動化に取り組み、ダムコンクリート自動打設システムを開発しました。

このシステムは、バッチャープラント(コンクリート製造設備)への材料供給から軌索式ケーブルクレーンによるコンクリート運搬・打設までの一連の作業を完全自動化するものです。施工管理者が行うシステム操作は、コンクリートバケット(鋼製容器)の運搬先となる打設位置の三次元座標、投入するコンクリートの配合種別等のデータを入力し、作業開始を指示するだけです。後は、骨材貯蔵設備、バッチャープラント、トランスファーカ(運搬台車)、コンクリートバケット、軌索式ケーブルクレーンといった各設備が連動して、一連の作業を完全自動で繰り返し実行します。

本システムには、自動打設の進捗を一目で確認できる総合管理画面も導入しています。管理画面には、バッチャープラント、軌索式ケーブルクレーンなどの各設備から出力される動作信号を基に、リアルタイムの打設状況がビジュアル表示されます。この画面は、タブレット端末からも閲覧可能です。

開発にあたっては、軌索式ケーブルクレーンで運搬するコンクリートバケットの位置座標の三次元制御が課題になりました。この課題を、軌索式ケーブルクレーンの操作制御情報と運搬するバケットの三次元位置情報を連動させる仕組みを構築することで解決し、全自動化に成功しました。

当社は今後、軌索式ケーブルクレーンを利用するコンクリートダム現場に本システムを展開し、今後想定される熟練技能労働者の減少に対応できる生産体制を構築していく考えです。

以上

≪参 考≫

ダムコンクリート自動打設の流れ

施工管理者が作業開始を指示すると、バッチャープラントが稼働し、コンクリート配合種別に応じた骨材・セメント・水等の材料計量、練混ぜ、トランスファーカへの積載を自動的に行う。続いて、トランスファーカがバケット位置まで移動し、コンクリートをバケットに積み替える。最後に、軌索式ケーブルクレーンがバケットを打設位置まで運び、コンクリートを投下する。これら一連の作業が全自動で連続的に実行される。さらに、バッチャープラントへの材料供給もシステムが自動管理し、プラント内の骨材量が不足すると骨材貯蔵設備から自動供給される。

ダムコンクリート製造・運搬設備の構成
ダムコンクリート製造・運搬設備の構成

軌索式ケーブルクレーン

両岸に渡す主ケーブルの片端(もしくは両端)に走行ケーブルを配置したケーブルクレーン(下図)。主ケーブル上を走行する横行トロリーと走行ケーブル上を移動する走行トロリーの位置を調整することで、ケーブル固定点を結ぶ平面上の任意の位置にクレーンを移動させることができる。

軌索式ケーブルクレーン

簗川ダム建設工事の概要

所 在 地 岩手県盛岡市川目地内
水系河川名 一級河川 北上川水系 簗川
事 業 名 簗川ダム建設(堤体工)工事
発 注 者 岩手県 盛岡広域振興局
受 注 者 清水建設(株)・(株)鴻池組・(株)平野組特定共同企業体
型   式 重力式コンクリートダム
規   模 堤高77.2m、堤頂長249.0m、堤体積228,500m3
天端標高 301.2(ELm)
工   期 平成26年12月11日~平成33年3月31日

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