既製コンクリート杭先端部の品質を化学的手法で判定

~杭先端部と支持層を一体化するソイルセメント強度を定量評価~

  • 建築

2018.06.20

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、既製コンクリート杭(以下、既製杭)の品質確保を目的に、杭先端部と支持層を一体化するソイルセメントの強度を化学的手法で判定する技術「CW-QUIC」を開発・実用化しました。所要時間がわずか1時間程度であり、費用も従来の圧縮試験と変わらないことから、今後、既製杭を採用する全現場に展開する予定です。

既製杭の施工は、杭孔の掘削、杭先端部を支持層に固定するためのセメントミルクの注入、杭の挿入という手順で進みます。日本建設業連合会の既製杭施工管理指針では、セメントミルクと泥水を攪拌して構築する、根固め部と呼ばれるソイルセメントの強度確認が推奨事項になっています。このため、現状では、現場での試験杭施工時に未固結のソイルセメントを採取して圧縮試験用のテストピースを製作。材齢3日乃至7日で圧縮試験を行い、所定の強度が発現していることを確認した後、本杭を施工します。発現しない場合には、施工計画を見直します。

当社の場合、既製杭の採用現場が毎年100件程度、新規に着工します。現状では、現場で採取したソイルセメントからテストピースを10体程度作製し、所定の業者に強度確認を依頼していたことから、現場で即座に強度確認できる検査手法の確立が求められていました。CW-QUICはこうしたニーズに対応した判定技術です。

CW-QUICは、ソイルセメントの強度を化学的な手法により判定します。ソイルセメントの強度はコンクリートと同じようにセメントと水の混合比率(セメント水比)と最も相関が高く、かつセメントはアルカリ性であることから、セメント含有量をアルカリと酸の中和反応を利用して判定することが特徴です。本判定技術の開発にあたっては、ソイルセメントの強度とセメント水比の関係を数式化するとともに、必要な強度を発現させることのできるソイルセメント中のセメント量をアルカリと酸の中和反応により求める事のできる換算表を作製しました。

判定作業の手順は、最初に採取した未固結状態のソイルセメント約10㏄を乾燥式水分計に投入、乾燥前後の重量を比較して水分量を求めます。次に、換算表上で、求めた水分量と必要強度を結ぶ交点に記されている酸の量を確認します。最後に100ccのプラスチック容器の中に所定量の酸、アルカリ・酸濃度を色表示する指示薬を約1g、乾燥したソイルセメント1gを入れて、全体の重量が100gになるように水を加えます。セメントを溶出させるために10分間隔で容器を振り混ぜ、30分程度経過時の溶液の色調で判断します。具体的には、当初の酸性を示すグレーからアルカリ性を示すピンクに変色すると十分なセメントが含有されており、必要な強度を発現すると判定することができます。ピンクに変色しない場合は不適と判断されます。

当社は今後、「CW-QUIC」の社内展開を加速するとともに、2年後を目途に本判定技術を杭の試験業者等に対してライセンス供与(実施許諾)していく考えです。

以上

≪参考≫

CW-QUICの意味

CW…水セメント比
QUIC…Quality Inspection of Cemented soil

CW-QUICによる検査結果

セメント量が十分な場合、右の2体の容器のように内容液がピンク色に変色する。不十分な場合、左の2体のようにグレーの域に色が留まる。

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