SCクリーンシステムで森林除染

~汚染を含む腐葉土層を効果的・限定的に除去~

  • 土木
  • 環境

2015.03.24

清水建設(株)<社長 宮本洋一>は、福島県内のセシウム汚染地域における森林除染向けに、高圧エアを使ってセシウムが浸潤している腐葉土層等を効率的、かつ限定的に除去できる「SCクリーンシステム」を開発、このほど、当社が福島県双葉郡広野町で実施している除染工事においてその効果を確認しました。今後、本システムを各地で行われる森林除染に展開する計画です。

森林除染については、当初の家屋から20mという範囲に加え、2013年度からは道路沿いの森林も路肩から20mまでが対象になりました。一方、森林除染の方法は、当初はセシウムが堆積している落葉等有機堆積物の除去となっていましたが、時間の経過によりセシウムが空隙の多い腐葉土層に浸潤した結果、所定の除染効果を得るには腐葉土層までの除去が不可欠になっています。

ただ、単に腐葉土層を除去すると(削り取ると)、植生の根まで断ち切ってしまうことになり、結果として腐葉土層下層の鉱物土層の流亡を招き森林を荒廃させる可能性があるため、「元の環境を復活する」という除染の趣旨に反してしまいます。そこで当社は、植生の根を残しつつ、腐葉土層等空隙が多くセシウムが多く浸潤している範囲に限って効率よく除去できる「SCクリーンシステム」を開発しました。

このシステムは、風速200~300m/秒の高圧エアで腐葉土層をほぐすエア噴付装置、ほぐされた土壌の吸引・回収装置、回収した除去土壌を空気と分離して大型土のう袋に詰め込む分別装置の3装置から構成されます。イメージ的には、エア噴付装置と吸引・回収装置は家庭用掃除機の回転ブラシ付き吸引ヘッド、分別装置は掃除機の本体部に該当します。使用する高圧エアはコンプレッサーからホースを介して供給します。システムは2t吊りクレーン装置付き2t積みトラックで運搬可能です。

高圧エアだけでは、空隙がない鉱物土層まではほぐれることがなく、かつ植生の根は切断されずに現地に残るため、腐葉土層に限った除去が可能であり、かつ残った植生の根が鉱物土層の流亡を防止します。また、ほぐれた土壌については、残った根に左右されずにもれなく吸引・回収できるので、汚染土壌が拡散することもありません。したがって、SCクリーンシステムを活用することで、必要最小限の除去量で、元の環境を極力維持しながら、腐葉土層を削り取る場合と同等の除染効果が確実に得られることになります。

以上

≪参 考≫

福島県広野町でSCクリーンシステムを実施した除染工事の概要

  • 工 事 名称広野町除染作業業務委託(平成25年度)
  • 場 所福島県双葉郡広野町一円
  • 発注者広野町
  • 施工者清水建設
  • 工期2013年6月25日~2014年11月28日
  • 概 要空地等除染7.67ha、森林除染138.00ha、森林再除染68.00ha
    農道除染9.79ha、墓地除染1.07ha、農地除染2.86haなど

高圧エアで腐葉土層をほぐす状況(左)と土壌の吸引・回収状況

除染作業前(左)と除染後に植生の根が残っている状況

ニュースリリースに記載している情報は、発表日現在のものです。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がございますので、あらかじめご了承ください。ご不明な場合は、お問い合わせください。