Topics

トップページTopics東京大学総合図書館 別館

東京大学総合図書館 別館

東京大学本郷キャンパスの広場の地下に埋設された、300万冊収蔵の自動化書庫と学生の創造的学習の場であるライブラリープラザを含む総合図書館の別館である。本郷キャンパスは建物の増加による敷地不足に悩んでいた。また、総合図書館は研究スペースの確保と能動的学習などの新しい学習形態に対する空間が求められていた。今回の計画では総合図書館本館前の広場の地下を有効利用することで、2つの課題の同時解決を目指した。この別館は現在進行している総合図書館の改修工事が完了し、一体的に利用されることで次世代を担う学生を育むハイブリッド図書館として完成する。

所在地 東京都文京区本郷
建築主 国立大学法人東京大学
延床面積 5,752m2
構造・階数 RC造・S造/地下4階・地上1階
工期 2014年11月~2017年5月

Design Keyword-1:地下46mに達する地下躯体(都市の地下有効活用)

周辺を建物で囲まれた広場での地下構築物の計画に当り、土木の施工技術であるニューマチックケーソン工法を採用した。地上でコンクリート躯体を打設しながら、躯体下部の土を排出することにより自重で沈下させるもので、コンクリート外壁が施工中に山留として機能することで、一般の仮設山留壁に比べ短工期を実現すると共に、周辺地盤の弛みを抑えることができる。 湿気を嫌う、水の浸入を確実に防ぐため、地下躯体外周をジョイント部を全溶接した厚さ6ミリの止水鋼板で覆う計画とした。



Design Keyword-2:地下空間にゆらぎのある自然光を導く噴水トップライト

計画地は関東大震災により発生した火災で焼失した旧図書館跡地であり、現総合図書館本館の建設時にその防火水槽としても機能する噴水が設置された。今回の計画ではこの噴水を再生すると共に地下空間に自然光を導くトップライトと組合わせて整備した。ゆらぎのある水面を通した自然採光を導くことで、明るくリラックスできる空間を創出している。トップライトからの漏水を防ぐため、アクリルパネルとガラストップライトの二重構造とし、アクリルパネル及びトップライトからの漏水を排水するための機構をトップライトの内側と外側にそれぞれ設置し、天井内からバッファゾーンを経由して、ピット階のポンプで排水する計画としています。

Design Keyword-3:ライブラリープラザの一体感と創出し快適性を高める国産スギの天井木格子

円形プランのライブラリープラザの天井には、中心のトップライトに向かって上昇する形状の天蓋を国産スギ無垢材で設けている。この天蓋は室内空気の調湿を行うと共に、発生音を適度に拡散させることで音の集中を防ぐ効果と、スギの香りによるリフレッシュ効果も期待している。

Design Keyword-4:快適な温熱環境を実現する輻射パネル+全面床吹出しのハイブリッド空調

ライブラリープラザは地下に設置されているという特性を生かし、全面床吹き出し方式と除湿型放射パネルを組み合わせた空調方式により、気流を感じない快適で穏やかな室内環境としている。円形断面の輻射パネルはライブラリープラザを緩く仕切る縦格子である共に音を拡散させる機能も併せ持つ。

Design Keyword-5:200人が同時に利用可能な吸音性を確保した音環境

ライブラリープラザは最大200人が利用できる能動的学習の場であり、様々な議論が交わされることを想定しているため、室内は高い吸音性を持つ仕上を採用している。天井の吸音パネルの他、円形壁の腰部に孔の大きさの異なる二重の有孔板(シナ有孔練付合板+有孔合板)による吸音壁を設置することで残響時間を静粛性の目安となる0.8秒(500Hz)を確保している。

Design Keyword-6:遺構を再現し、歴史の重層性を表現した広場計画

計画地には、江戸時代の加賀藩江戸屋敷、関東大震災で焼失した旧図書館があり、埋蔵文化財調査により江戸時代の加賀藩邸の排水溝及び旧図書館のレンガ基礎の遺構が発見された。今回の計画では、歴史の重層性を感じる空間となるよう、排水溝の石は床仕上のパターンとして洗い出しコンクリートに埋め込み、レンガは広場のベンチとして発見された位置に再生する計画とした。