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西新井大師総持寺山門保存修理工事

西新井大師総持寺山門は、建具金物裏面の陰刻より天保四年(推定)に建立された総欅造の楼門で、足立区指定有形文化財である。
今回の保存修理工事では『文化財価値の継承』に加え、機能性の向上および耐震性能の向上といった『社会的価値の向上』に取り組んだ。

所在地 東京都足立区
建築主 宗教法人総持寺
延床面積 68.74m2
構造・階数 木造/地上2階
工期 2017年3月~2018年11月

文化財価値の継承

文化財保存修理方針は、現状維持を原則とし劣化調査に基づいた修理を行うこととした。


礎石の割れ

柱脚・土台の腐朽

腰貫の腐朽

台輪隅仕口のあき

化粧軒裏の雨染み

懸魚の欠損・銅板の腐食

現況調査により建物の不同沈下、変形が確認され、屋根の漏水による小屋組部材の腐朽、柱脚部及び2 階外縁の木部腐朽等の破損劣化が各所に見られたことから、屋根銅板の葺き替え・木軸部等の修理を含む劣化修理を行うこととした。根巻金物等の錺金物には破損・欠失が見られたことから、これらについては創建時のものに倣い復原を行うこととした。


曳家直前の建物状況

曳家工事のサンドルとレール

修理方法は曳家を行った後に、上層を揚屋しつつ、下層の柱の劣化部分を交換する半解体修理とし、地域に慣れ親しまれている歴史ある建物外観を変えることなく保存することを目指した。 移転先に先行して杭・RC基礎を新設してから建物をジャッキアップし、所定の位置に曳家していった。

機能性の向上

改修前は山門が道路に直面して配置しており、門前商店街との間にゆとりもない状況だったが、大勢の参拝客を迎え入れる寺院の門構えとして整備するべく、建物配置を境内側に6m移動して門前広場を設け、地域交流の活性化を図るとともに、混雑時の参拝者の通行の安全も確保することができた。


改修後、正月時に大勢の参拝客で賑う門前広場。

耐震性能の向上

耐震補強では、外観を変えず、既存部材を傷つけない構法として、鉄骨フレームを建物内に新設して耐震性能を付加する方法を採用した。

建物の自重は伝統木造本来の仕組で支え、これに独立した鉄骨フレームを内蔵させて地震時の水平力に抵抗させている。鉄骨フレームの上層には水平構面を設け、主要な木梁と接合して二つの構造物を水平方向につないでいる。木材は乾燥収縮や経年での仕口のゆるみなどから、地震などとは関係なく鉛直方向に挙動するため、木梁と鉄骨フレームとの接合は、上下の移動は許容し水平には拘束するディテールを検討した。

仁王像を避けた背面のデットスペースに鉄骨柱を設置することで、外観を変えることなく補強することが可能となった。また、建物配置を移動することにより、強固な杭や基礎を新設できたことも耐震性の向上に大きくつながっている。


木梁と鉄骨との接合部

改修後 2階内観